2011年10月24日(月)「しんぶん赤旗」

空自の次期主力戦闘機選定

米依存、軍拡の道


 航空自衛隊のF4戦闘機に代わる次期主力戦闘機(FX)が年内に決められようとしています。FX購入は5000億円を超える事業。整備や改修費などを含めれば1兆円を超えるともいわれています。軍需企業と関係国は売り込みに躍起ですが、ここでもアメリカの思惑が強く作用しています。FX選定を検証します。(洞口昇幸)


 米ロッキード・マーチン社のF35、英国など欧州4カ国が共同開発したユーロファイター、米ボーイング社のFA18の3機種がFXの最終候補になっています。

最有力はF35

 防衛省の資料によれば、「周辺国」の「第5世代戦闘機の開発及(およ)び空軍力の近代化」を示し、「能力の高い戦闘機を整備し我が国の防空能力を向上」することが必要だとしています。中国やロシアが敵のレーダーに探知されにくいステルス性に優れている第5世代戦闘機の開発を進めていることを理由にあげています。

 一川保夫防衛相は7日の記者会見で「基本的には、われわれが求める性能というのは一番大事であることは間違いない」と述べ、F35が最有力であることを示唆しました。候補機種のなかで唯一、同機が第5世代です。

 しかし、F35は候補機種で最も高価で、開発や配備の計画が遅れ、予定の2016年度に調達できる見通しはありません。開発軍需企業に特許使用料を払って国内軍需企業が製造する「国内ライセンス生産」の割合も一番低く、機体の大部分が「ブラックボックス」(構造不明)で、自衛隊の装備体系をいっそうアメリカに従属させることにつながります。

 これに対してユーロファイターの英BAEシステムズ社は「ノーブラックボックスだ」として、日本の軍需産業にとって同機の導入が有益であることをアピールします。

政治的な決断

 航空評論家の青木謙知氏は「次期主力戦闘機の選定は装備の象徴的なもの。ヨーロッパのものを選んだ場合のアメリカの強力な政治的圧力を考えれば、ユーロファイターは難しいのではないか」と述べます。

 安全保障問題に詳しい元政府高官は「装備体系も外交・防衛政策と同じようにアメリカに依存してきた」と説明します。

 日本政府はこれまでの主力戦闘機選びで、そのときの候補機のなかで一番性能が高く、米軍が運用しているものを採用してきました。ある政府高官は「政治的な決断も選定の要素に含まれているだろう」と言いました。

 FX選定と並行して、原則として全ての武器と関連技術の輸出を禁止する武器輸出三原則の緩和の動きも強まっています。

 ある防衛省幹部は「緩和は、将来的な米国や他国との戦闘機などの共同開発や国内軍需産業の生産基盤の維持と向上につながる」と語りました。

 F35もユーロファイターも国際共同開発によるもの。日本の軍需産業はこれに参加したいという野望を持っています。前出の元政府高官は解説します。「これまでも日米のミサイル防衛の開発などで武器輸出三原則を緩和してきたが、日本の財界はさらに自由にやりたいという考えだ」

 FX購入は日本の装備体系のアメリカ依存をさらに深くしながら、周辺国との緊張と軍拡競争を強めることになります。


 次期主力戦闘機(FX) 昨年末に新防衛大綱とともに決定された中期防衛力整備計画(2011年度〜16年度)で、退役を進めているF4戦闘機の後継機(FX)を整備することが盛り込まれました。防衛省は来年度軍事費の概算要求でFXを4機調達するために551億円を計上。最終的に約40機を調達する方針です。





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