2011年10月23日(日)「しんぶん赤旗」

介護保険 高齢者のケア困難に

生活援助時間 25%カット


 介護を必要とする高齢者の在宅生活を支える介護保険の生活援助(掃除・調理・買い物など)について、基本的な提供時間を現行の「60分未満」から「45分未満」へと25%も切り縮める動きが浮上しています。ホームヘルパーらは「コミュニケーションを含めた高齢者へのケアがますます難しくなる。ヘルパーの働きがいを奪い、離職を加速させる」と批判しています。


 問題の縮減策は、介護報酬(介護保険サービスの公定価格)の改定を議論する社会保障審議会介護給付費分科会で厚生労働省が提案したもの(17日)。

 現在、生活援助は「30分以上60分未満」の提供が基本で、その場合の報酬は2290円(地域によって割り増し)です。60分以上はどれだけ提供しても620円しか上乗せされず、長時間提供するほど事業所の経営が悪化します。その結果、60分未満ないし90分未満に押し込められています。

厚労省の計算

 今回の縮減策は「60分未満」の区切りを「45分未満」に短縮して報酬を減らし、高齢者への援助を削るものです。

 厚労省は、掃除・調理・洗濯などの行為は一つにつき15分で済むこともあり、二つの行為を40分で終わらせることも可能だとの計算を示しています。

 ヘルパー歴20年の藤原るかさん(「共に介護を学びあい励まし合いネットワーク」代表)は、「洗濯が15分で終わるという言い分一つとっても非現実的です。また、生活援助は家事行為だけやって『はい、さようなら』というものではありません」と憤ります。

 掃除の最中も高齢者の言動に注意を払います。トイレの汚れからは、おなかの調子や糖分のとりすぎといった健康状態がわかります。

 「生活援助を通して健康や精神の状況を推しはかり、見守り、コミュニケーションをとる。これは、介護報酬では評価されませんが、生活援助の大事な中身です。いま以上に時間を短縮すれば、そうしたケアができなくなります」

認知症の人は

 要介護高齢者の多くは認知症を抱え、一人暮らしや老老介護の世帯が増えています。

 「認知症の人と家族の会」の勝田登志子副代表は「認知症の人にとって、ヘルパーとの会話は薬より効果がある場合も多いのです。その時間を減らされるのはたいへんなことです」と話します。

 もともとは2〜3時間かけて高齢者の生活の全体を支えるホームヘルパーの援助が定着していました。2006年に政府は30分ごとの報酬の加算を廃止し、事実上90分までに制限しました。

 生活援助の時間を減らされた高齢者からは「ひどい」と悲鳴があがりました。ヘルパーは時間に追われ、利用者との会話もままならない状態に追い込まれています。

 介護の必要な高齢者が増え続けているにもかかわらず、06年以降ヘルパーの人数は減少に転じています(グラフ)。藤原さんは「制度改悪で働きがいを奪われたことが一つの要因」と指摘します。

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