2011年10月19日(水)「しんぶん赤旗」

主張

新基地押し付け

沖縄県民の怒りを招くだけだ


 一川(いちかわ)保夫防衛相が17日沖縄県の仲井真(なかいま)弘多(ひろかず)知事と会談し、米軍普天間基地の名護市辺野古(へのこ)への「移設」の前提となる環境影響評価書を、年内に提出することを公式に伝達しました。一川防衛相は同日、名護市の稲嶺進市長にも提出の意向を伝えました。

 評価書の提出は新基地建設のための辺野古沿岸部の埋め立て申請につながる重大な動きです。野田佳彦首相がオバマ米大統領との会談で表明した、普天間基地の「移設」を「進める」との約束を果たすためのものです。普天間基地の閉鎖・撤去を願う沖縄県民の心を逆なですることは明らかです。

欠陥アセスの「評価書」

 普天間基地の「移設」に反対する県民の決意はいまもまったくゆらいでいません。仲井真知事も一川防衛相に「県民の怒りは解消されていない」とのべ、稲嶺市長が「政府は移設に反対する県民の声をくみとることなく辺野古に固執し現在の混迷を招いた」と強く抗議したのは当然です。

 一川防衛相が環境影響評価(アセスメント)の最終段階となる「評価書」を年内にだすとのべたのは、既成事実を重ねて「移設」を進めようというねらいですが、県民はそうしたもくろみを許すはずがありません。

 そもそも新基地建設のために防衛省が行ってきたアセスそのものが「欠陥・違法」の指摘をくりかえし受けているものです。新基地を離着陸するヘリなどが訓練のために住宅上空を飛ぶことがあると米軍でさえ認めているのに、アセスは飛行経路も示していません。沖縄県環境影響評価審査会からも強く批判され、不備があるとしてやり直しを求める訴訟もおきているのに、欠陥・違法が明白なアセスを前提に新基地建設計画を進めるなど言語道断です。

 防衛省が評価書を知事に提出すれば知事はそれに意見をのべることになりますが、貴重な海洋資源の破壊や最新鋭の輸送機オスプレイ導入による新たな騒音被害など、問題は山積しています。評価書の提出は問題の解決につながらず、県民の新たな批判をよびおこすのは目に見えています。

 政府が実務的な手順を踏むと見せて県民に圧力を加えること自体許せない手法です。沖縄県民は1996年の日米特別行動委員会(SACO)合意で県内「移設」が持ち出されて以来、辺野古の海に新基地建設の杭(くい)1本打たせていません。野田政権が卑劣な手法で県民の心をもてあそぶならこれまで以上の怒りを招くことは避けられません。野田首相はこの15年間の政府の企てがすべて破綻してきた事実を直視し、県民への理不尽な押し付けをやめるべきです。

願いは普天間基地撤去

 政府は一川防衛相の沖縄訪問に先立ち、川端達夫沖縄担当相を沖縄に送りました。18日には玄葉光一郎外相を沖縄入りさせ、相次ぐ閣僚の投入で沖縄への圧力を強めています。アメリカとの約束を果たすため、文字通りなりふりかまわぬ態度です。

 野田政権が圧力をかければかけるほど県民の反発を買うのは必至です。米軍が県民の土地を不当に奪って建設した普天間基地は無条件で撤去・返還すべきものです。野田政権の強圧的態度を許さず、沖縄と本土が連帯を深めてたたかうことがいよいよ重要です。





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