2011年10月17日(月)「しんぶん赤旗」

震災7カ月 長野・栄村

水田に迫る冬 復旧どこまで

「コメ作れない」補償求める声


 東日本大震災発生翌日の3月12日、震度6強などの地震が長野県栄村(人口約2300人)を襲ってから7カ月が過ぎました。3人の人命を奪い、家屋や農地に多大な被害を及ぼしました。小さな集落ごとにコメ作りで生きる村の再生の足どりは―。同村を訪ねました。(大星史路)


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(写真)集落の4割の家屋が解体された青倉地区

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(写真)水路が壊れた田に植えたソバの収穫を見守る農家の人たち11日、長野県栄村

 10月中旬。崩落部分にブルーシートがかけられたままになっている田んぼや斜面、壊れた家屋の解体や修復する光景が集落のいたるところにありました。

 被害が最もひどかった青倉地区では、58世帯中、4割の24世帯が家屋を解体しました。道路の両側に建ち並んでいた家屋が平地となり、震災前と風景が一変していました。

 被災した家屋は、全壊33棟、大規模半壊21棟、半壊148棟、一部損壊486棟。家屋の解体費用は、日本共産党が要求して、村の全額負担になりました。

 家屋の修復や再建にかかる個人の費用は、数百万円から1000万円にもなる人もいます。地震により土台がひび割れたため、「半壊」評価でも住めなくなっている家もあり、余計に経費がかさんでいます。

 家屋被害にたいする個人への公的支援は、国・県の補助金や見舞金、義援金などをあわせてもわずかです。

 村は、被災者のために村営の「復興住宅」33戸を集落ごとに建設する計画です。

年の半分は雪に覆われ

 冬を前に、水田の復旧がどこまでできるかが心配されています。水田の被害箇所は合計700カ所以上、それに水路、農道などが加わります。

 栄村は日本有数の豪雪地。年の半分は雪に覆われます。11月には雪が降り始めます。この期間、復旧工事はできません。

 村では、10月から水田の復旧工事が始まりました。

 村の災害対策は9月村議会で補正予算が組まれ、予算規模は当初予算の4倍の86億円にまで膨れました。

 森地区の専業農家、男性(78)は、水路が崩落し、今年のコメ作りはできませんでした。「早くコメを作りたい。だが、田の工事が終わらず、来年もできないだろう」とため息をつきます。

 水田の復旧が間に合わなければ、2年続けてコメの収入が途絶え、農家の生活に影響します。19世帯で集落営農にとりくむ横倉地区では、今年のコメの収量は昨年の半分以下。500万〜600万円の減収となる見込みです。

 「作付けできない田へ何らかの補償をしてほしい」と農家から声があがっています。

農家の負担なくす集落

 農地復旧工事で農家の負担が重くのしかかっています。激甚災害法の補助を受けても、農家には事業費の5%程度の負担があります。高齢世帯などで水田の復旧をあきらめる人もいます。

 農家負担をなくす公的支援・制度がない中、住民が水田を懸命に守ろうとしている集落もあります。

 13世帯が共同でコメ作りをしている小滝地区は、水田の復旧工事の農家負担をなくしました。農家が、中山間地等直接支払制度の交付金を拠出し、農機具の更新などのためにためていた集落のお金を農家負担分に回しました。

 被害が大きかった同地区は、作付けが3分の1にとどまりました。

 小滝地区の樋口正幸区長(53)は、「50万円の農家負担金は、高齢者には無理。農家負担をゼロにしないと田が荒廃してしまう。個人ではとても対応できないので集落でまかなった」と話します。

 青倉地区では、農家の後継者など16人でつくる「受託作業班」と呼ばれるグループが水田18枚の工事の農家負担金を肩代わりし、耕作を受け継ぎました。

 激甚災害指定の対象にならない工事費40万円以下の農地の小規模災害復旧は、村の事業(県の補助含む)で5%程度の農家負担で対応しています。

 日本共産党村議団(鈴木敏彦、山本千津子両村議)は、行政が住民の声をよく聞き、農家負担をできるだけなくし、水田のある村を守ることや、被災者・住民の生活補償などを求めています。





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