2011年10月4日(火)「しんぶん赤旗」

米国籍アウラキ氏を他国で殺害

“国内・国際法に反する”

CIAなどの攻撃に批判


 【ワシントン=小林俊哉】イエメンの「アラビア半島のアルカイダ」のアンワル・アウラキ師が、米中央情報局(CIA)と米特殊作戦軍が実施した無人機による攻撃で殺害されたことについて、法的正統性を問う声が上がっています。

 批判のポイントは(1)米政府が、米国市民であったアウラキ師を、裁判などの法的手続きを経ず、殺害したことの是非(2)交戦中ではない他国領内で実施したことの是非、が中心となっています。

憲法の権利抜き

 米自由人権協会(ACLU)は、「国内法にも国際法にも反する」と批判。憲法権利センター(CCR)も「(政府が)脅威とみなした市民を、法的手続きも、憲法で与えられている権利も抜きに殺害するもの」と批判しています。

 ロン・ポール下院議員(共和)は「(米政府が)米市民を暗殺しはじめるということは、非常に深刻なことだ」と述べています。

 オバマ米大統領は9月30日、アウラキ師が、2009年の米旅客機爆破未遂事件など“米国への攻撃”を指揮してきたと主張。カーニー大統領報道官は、法的議論については、コメントしないとの立場です。

秘密メモを作成

 米紙ワシントン・ポスト(1日付)は、米国市民を交戦中でない他国で殺害するのは合法だと結論付ける秘密メモを米司法省が作成していたと報じています。メモの詳細は明らかでありませんが、米メディアによると(1)米国に攻撃を加える敵対者の殺害は「自衛」であること(2)9・11テロ事件後に成立した「テロリストに対する軍事力行使権限法」で大統領に権限が与えられていることが、米政府が主張する“法的根拠”だと指摘されています。

 アウラキ師は米ニューメキシコ州生まれの米国市民。同氏の父は昨年、殺害リストからアウラキ師を除外するよう求めて提訴しましたが、連邦裁判所は“執行権力による政治判断”を理由に「審理不可能」として却下しています。

 アウラキ師の殺害は、イエメン当局からの情報で同師の所在を確認した米側が、同師が車に乗り込んだ直後に、無人機によるミサイル攻撃を実施。同乗していた3人も死亡し、そのうちの1人も米国市民でした。

 5月のパキスタン領内でのビン・ラディン容疑者の殺害に続く、今回のアルカイダ指導者の国外での殺害措置は、オバマ政権の“対テロ強硬姿勢”のあらわれともいえます。





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