2011年10月4日(火)「しんぶん赤旗」
オバマ政権の台湾武器売却
米中関係への影響は
米政府が9月21日、台湾に総額約58億5000万ドル(約4500億円)の武器を売却する方針を明らかにしました。オバマ政権下では2回目となります。今後の米中関係に与える影響で、米側に比較的慎重な見方がある一方、中国側には強硬な態度がみられます。(ワシントン=小林俊哉、北京=小寺松雄)
米 「対立、深刻化せず」
中 “約束違反”と批判
米政府高官は9月21日、武器売却について「台湾が平時、有事双方で領空を守る能力を維持することを保障するもの」と説明。同時に「この売却で、オバマ政権としては、台湾に(総計)120億ドルの武器を売却したことになる。台湾関係法発効以来の最大級の規模だ」と述べました。
その一方で、中国側が反対していた新型F16戦闘機の売却は断念しています。
「苦しい妥協」
米シンクタンク・新米国安全保障センター(CNAS)のロバート・カプラン氏はこの決定を「オバマ政権にとって苦しい妥協」と評価。「米中が軍拡競争よりも、緊密な外交的理解を深めることで、台湾の防衛はよりよくなる」という考えが同政権の発想だと指摘しています(25日付米紙ワシントン・ポスト)。
売却問題を受けて、中国の楊潔箎(ようけつち)外相が軍事交流の中断を示唆したことについて、米政府高官は26日の米中外相会談後、「別に異常なことではない」と語り、対立は深刻化しないとの見通しを示しています。
ウィラード米太平洋軍司令官も27日の記者会見で、武器売却の公式発表前に中国軍の高官と会談し、この問題で議論したことを明らかにしています。軍事交流の中止についても、限定的だとの見通しを示す一方、この武器売却でも、台湾海峡の軍事バランスに変更はないと述べました。
大使呼び抗議
一方、米国が台湾への武器売却を決めたあとの中国の反応は強硬でした。
外務省はすぐ報道局長談話を出し、外務次官が米駐中国大使を呼んで抗議。訪米中の楊外相は22日の講演で、台湾への武器売却を最終的に停止するとした1982年の米中の共同コミュニケを念頭に「約束違反」と批判しました。
昨年1月に同様の事態が起こった際、中国は上半期に予定されていたゲーツ国防長官(当時)の訪中を拒否。その後の一連の米中軍事交流を中止しました。
事態の修復には1年を要しました。今年1月にゲーツ氏が訪中して、米中軍事交流が軌道に乗り、その直後、胡錦濤国家主席が訪米してオバマ米大統領と会談し、共同声明を発表しました。
中国外務省の洪磊副報道局長は9月末の記者会見で「今回の武器売却で米国にどんな具体的対応をとるのか」との重ねての質問には直接答えず、「米国が売却をやめることだ」と当初のコメントを繰り返しました。
ただ中国国防省の態度はまだ軟化したとはいえません。耿雁生(こうがんせい)報道官は9月28日、「今回の売却は極めて大きな危険性を持っている。米中両軍が計画している交流、合同演習などが影響を受けることは必至だ」と言明しました。
台湾関係法 台湾に対する基本政策について規定した米国の国内法。米中国交正常化を受け、1979年に成立。米国は、台湾を国家と同様に扱い、兵器の供給を行い、台湾住民の安全や社会に危害を与える武力行使などに対抗する能力を維持するとしています。これに対し、中国は内政干渉にあたると非難しています。
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