2011年10月1日(土)「しんぶん赤旗」

「パレスチナの春」運動に背向ける

国連加盟問題

米政権「歓迎」 一転 「反対」

専門家も“一貫性ない”と指摘


 パレスチナの国連加盟申請をめぐって、オバマ米政権の姿勢が問われています。かつて「歓迎」を表明しながらいまは「反対」に転換。国際的な反米感情の拡大を招く安全保障理事会での「拒否権」発動は避けたいものの、中東和平交渉再開の見通しも打ち出せません。(ワシントン=小林俊哉)


 「他のアラブ諸国が受けている扱いと支持に、なぜパレスチナが値しないのか」―米国のカーネギー平和財団のムアシャー氏は指摘します。民主化を求めるアラブ諸国民の運動を支持しながら、パレスチナ人民の要求は拒否する―オバマ政権の抱える矛盾です。

 パレスチナ自治政府のアッバス議長は9月23日、国連総会での演説で、「アラブの春」になぞらえ、同人民の運動を「パレスチナの春」と表現しました。中東に詳しいコラムニストのイグナシウス氏は、中東の運動は国民が求める「尊厳のための革命」として、パレスチナの運動とつながっているといいます。

 オバマ氏は、中東和平の推進を最優先課題に掲げてきました。昨年9月の国連総会演説では、1年後にパレスチナの国連加盟を歓迎したいと表明。今年5月の中東政策演説では、イスラエル側が画定を拒否する「1967年国境線」にも言及しました。

 同時に「イスラエルの安全保障」という名のもとで、イスラエル支持の姿勢は堅持しています。軍事援助は過去最高。今年2月、安保理での入植中止決議案には拒否権を発動しました。

 パレスチナの国連加盟を歓迎するはずだった今年の国連総会で、加盟に反対する演説をしたオバマ氏の姿は「ほとんど哀れ」(イグナシウス氏)。中東4者協議(カルテット)が新行程表に基づく交渉開始案を発表したことで、安保理での拒否権発動という事態は先延ばしとなりましたが、米国は水面下で、理事国にパレスチナを支持しないよう働きかけを続けているといいます。

 今回の事態でさらけ出されたのは「(オバマ政権の)対中東政策の一貫性のなさ」(外交問題評議会のジェームズ・リンゼー氏)。そこには「アラブの春」を歓迎しながら、イスラエルとアラブ諸国との対立の中で、イスラエルに肩入れする姿勢から抜け出せない米国の限界もみえます。





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