2011年10月1日(土)「しんぶん赤旗」

主張

南スーダン派兵

憲法の平和原則ふみにじるな


 政府は、独立して間もないアフリカ南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)への参加に向けた準備を本格的に進めています。

 野田佳彦首相は国連演説(23日)で南スーダンPKOへの自衛隊施設部隊の派遣について「関心を有して」いるとのべました。そのわずか十数時間後には外務省や防衛省の職員など30人からなる政府調査団が南スーダンに出発しました。調査実績を踏み台にして派兵に踏み出そうとしているのは明白です。海外派兵はどんな形であれ憲法違反です。政府は南スーダンへの派兵の企てをやめるべきです。

PKO5原則にも違反

 国連が日本に求めているのは、すでに派遣が決まっている司令部要員に加え、300人規模の陸上自衛隊施設部隊とヘリ部隊の派遣です。野田首相が国連で、施設部隊の派遣を「日本の得意分野」としたうえで「ぜひとも貢献したい」とのべたのは重大です。憲法違反の海外派兵を日本の「得意分野」だということは許されません。参議院の「自衛隊の海外出動禁止決議」(1954年)にも反します。派兵計画は断念すべきです。

 南スーダンへの派遣は国連の要請ですが、野田首相がいち早く派兵に向けて動き出したのはアメリカとの約束が背景です。日米両政府が6月21日に決めた日米安全保障協議委員会(2プラス2=外交軍事閣僚協議)の合意文書は、日米の「共通戦略目標」の一つに「平和維持活動における日米協力を強化する」ことをあげています。PKO参加の強化・拡大は対米約束そのものなのです。

 野田首相がPKOへの自衛隊派遣を急ぐのは、対米約束を実施することで忠誠を示し、野田政権の基盤を安定させるのが狙いです。党略的な思惑で派兵するなど言語道断です。

 南スーダンPKOへの参加は1992年のPKO法制定時に政府がもちだしてきたPKO5原則にさえ反します。5原則とは停戦合意、受け入れ国の同意、中立性、以上のいずれかが崩れた場合は撤収、武器使用を隊員の身体・生命防護に限定する、というものです。南スーダンは独立したとはいえ、隣接するスーダンとの国境地帯で衝突が起きるなど不安定な状況が続いています。部族対立もあります。自衛隊が戦闘に関与しない保障はありません。

 南スーダンPKOの根拠である国連安保理決議1996は、一般市民の保護のためにも「必要なあらゆる手段を用いることを許可する」とのべ、武力行使を容認しています。これまでのPKOとは明らかに違います。5原則の前提と異なる事態に対応する南スーダンPKOに、議論もつくさないで“派兵先にありき”でことを進めるのは絶対に認められません。

非軍事・平和の道こそ

 独立した南スーダンの国づくりに国際社会の一員として協力するのは当然です。しかし日本はあくまでも憲法が認める非軍事・平和の手段で行うべきです。

 憲法制定のさい政府は「国連から注文を受けても兵力提供はできぬ」とのべ、国連加盟のさいもそれを条件にした経緯もあります。政府は、派兵は憲法で禁止されていると国連にきっぱりいうべきであり、民生安定や生活支援など、憲法9条を生かした役割をこそ果たすべきです。





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