2011年9月23日(金)「しんぶん赤旗」

野田首相の国連演説

原発 安全性言う資格なし


 「日本の原発の安全性を世界最高水準に高める」―。福島第1原発事故が最重要議題となった国連の原子力安全に関する首脳会合で、野田佳彦首相はこう表明しました。

収束に遠く

 世界最悪水準の事故を起こし、しかも事故収束はほど遠い状況で「世界最高水準の安全性」を口にする資格はありません。しかも、「事故の教訓を世界に発信する」といいながら、新たな「神話」をふりまくのは論外です。

 首相はすでに米紙のインタビューで、現在停止中の原発について、「来年夏以降の再稼働」を表明。原発の安全性について「世界最高水準」と強調したのも、原子炉や原発技術の輸出を念頭に置いたものです。

 その背景にあるのは、あくまで原発の維持・推進にしがみつく電力業界や、ベトナム、ヨルダンなど「新興国」への原発輸出に活路を見いだそうとする原発メーカー、さらに「地球温暖化対策」と称して、日本の技術も取り入れながら新型原子炉の開発に着手している米国などの利益です。

 事故当事国である日本の首相の表明は米国や財界を大いに励ます一方、福島の事故を受けてドイツやイタリア、スイスなど世界的に広がった“脱原発”の動きに冷や水を浴びせることになりました。

 のどかな農村が一夜の放射能の雨で破壊され、人々は被ばくの不安を抱えながら生きることを余儀なくされる、土壌や地下にたまったばく大な放射性物質は、いつ消滅するとも知れない…。空間的、時間的、社会的に制限のない「異質の危険」が明らかになったのです。首相の発言は、このような惨状をわが身に引き寄せて行動する国内外の人々の思いを踏みにじるものです。

根拠示さず

 首相は、「放射性物質の放出量は400万分の1に抑えられている」として、福島第1原発の年内の「冷温停止」を目指すとしています。しかし、原子炉の内部の状態はだれも正確に確認できていません。また、地下に漏れた放射性物質がどのような状況なのかも分かっていません。

 そもそも、何をもって「400万分の1」なのか。その根拠も示されていません。

 また、首相は「津波への備えに過信があった」と述べていますが、これは、津波だけの問題に矮小(わいしょう)化する議論です。日本共産党や住民団体が繰り返し、津波による電源喪失の危険性を指摘しながら耳を傾けなかったことも問題ですが、福島第1原発は津波以前に、地震で建屋が崩壊していました。

 仮に「冷温停止」に成功したとしても、より深刻な問題は原子炉の外に存在しています。広島型原爆20個分といわれる放射性物質が放出され、土壌などの除染はまだ緒についたばかりです。汚染物質や土壌の保管場所も、まったく見通しが立っていません。

 再稼働や輸出をうんぬんする以前の問題として、事故収束に向け、あまりに多くの課題が横たわっているのです。 (竹下岳)





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