2011年9月16日(金)「しんぶん赤旗」

被災地の叫び 受けとめよ

代表質問 志位委員長の提起


 「大震災の復旧・復興に政府は責任を果たしてきたといえるのか」。衆院本会議で15日、野田政権発足後初の代表質問にたった日本共産党の志位和夫委員長。東日本大震災と原発災害の二大問題について、被災地の願いを受け止めた志位氏の具体的な提起に、野田佳彦首相はどう答えたのか―。


震災復興

国は責任果たしているか

 「破壊された生活と生業(なりわい)の基盤を回復し、再出発できるよう公的支援を行うことこそ、国の最大の責任だ」

 志位氏はこうのべ、二重ローン問題(1面参照)と医療機関の再建で「政府は責任を果たしてきたのか」とただし、要求をふまえ具体的な提案を行いました。野田首相の答弁は全体として従来の枠をでませんでした。

公立病院支援拡充

 被災3県では、104の病院・診療所が全壊し、936の病院・診療所が一部損壊という大被害を受けました。

 ところが、その再建は“医療機関まかせ”になっているという声が上がっています。志位氏はその声を背に、公立病院への支援を拡充すること、あまりに貧弱な民間病院・診療所への支援については新たに制度を創設し、すべての医療機関の復旧に国が責任を負うよう求めました。

 野田首相は「第3次補正予算で、民間医療機関への支援も含めて国としてできる限りの支援を検討していく」と答弁したものの、新たな制度創設を含め国が責任をもって再建にあたるとの姿勢は示しませんでした。

 「大震災に便乗した財界・大企業の身勝手を許していいのか」

 財界におもねる首相の姿勢を志位氏は2点にわたってただしました。

特区押しつけるな

 一つは、大企業が自由勝手に沿岸漁業に参入できる「水産特区構想」です。漁業資源の適切な管理が損なわれ、浜の荒廃に直結するとして、漁協をはじめ激しい反対の声が上がっています。

 志位氏は、漁業者が反対する方針を押し付けて復興などできないと指摘。「国がやるべきは生産・加工・流通一体で水産業のインフラを復旧するために本腰を入れた支援に乗り出すことだ」と求めました。

 もう一つは、財界が「参加を急げ」と号令をかける環太平洋連携協定(TPP)です。

 志位氏は、TPPに参加すれば関税撤廃で米の生産は90%も減少し、ワカメ、コンブ、サケ・マスなど第1次産業に壊滅的な打撃を与えることを強調。「被災地の地域経済を支える第1次産業を土台から破壊して、どうして復興ができるのか」と述べ、食料自給率と両立しえないTPP参加をきっぱり断念するよう求めました。

 野田首相は「水産特区」の問題点には答えず、「地元の意見をうかがい、真に復興に資するものとなるよう努める」と官僚答弁に終始しました。

 TPPについては「被災地の農業復興にも関係している」ことは認めつつも、復興の重大な障害となるとの指摘には答えず、交渉参加については「しっかり議論し、できるだけ早期に結論を出していく」と執念をみせました。

図

原発災害

命と暮らし守る緊急対策

除染を一大事業で

 収束の見通しもつかない原発事故。志位氏は「安全神話」にどっぷりつかってきた歴代政権の責任を追及するとともに、除染や賠償問題、エネルギー政策の転換で具体的提起を行いました。

 野田首相は「政府も事業者も『安全神話』にとらわれてきた事実は反省すべきだ」と述べたものの、具体策は従来の基本方針の枠内にとどまりました。

 除染問題で志位氏は「放射能汚染から、国民、わけても子どもたちの命と健康を守ることは、日本社会の大問題だ」と提起。“広島型原爆の20個分”といわれるばく大な放射性物質の除染は「人類がこれまで取り組んだことのない一大事業だ」として、自覚と覚悟を問いただしました。

 そのうえで、「被ばくは少なければ少ないほどよい」という大原則に立った対策が求められるとして「年間20ミリシーベルトを超えたら国が除染するという受け身の姿勢では国民の命と健康を守ることはできない」と強調、四つの具体的対策(別項)を提起しました。

 ところが首相は、20ミリシーベルトで線引きした8月26日の「除染に関する緊急実施基本方針」に基づいて取り組むと述べるだけ。自治体が自主的に20ミリシーベルト以下の除染をするなら支援するなどの答弁に終始しました。

図

全面賠償を明確に

 待ったなしの原発災害の賠償問題。志位氏は、福島県原子力損害対策協議会が政府の中間指針について「すべて賠償されることが大原則」と批判していることを示し、「原発事故がなければ生じることのなかった損害について、被害者が求めるものはすべて賠償する『全面賠償』を大原則にすべきだ」と強調しました。首相は「『中間指針』で残された課題は引き続き審議が行われる」と述べるだけで、被災地の声に背を向ける姿勢を示しました。

 志位氏は、賠償について東京電力はもとより原発で大もうけをしてきた電力業界、原発メーカー、大手ゼネコン、鉄鋼・セメントメーカー、大銀行など「原発利益共同体」に求めるよう主張。首相は「産業界は避難住民に宿舎や雇用機会の維持、確保など協力している」と述べ、責任と負担には踏み込みませんでした。

原発ゼロへ決断を

 「原発事故はエネルギー政策の根本からの見直しを迫っている」。志位氏は、こう述べて原発再稼働や新設の断念を迫るとともに、「原発から速やかに撤退し、『原発ゼロの日本』への政治決断を行うとともに、期限を設定して原発をなくし、同時並行で自然エネルギーの急速な普及を進めるプログラムをつくるべきだ」と求めました。

 首相は「原発への依存度を可能な限り引き下げる方向を目指すべき」としか述べず、新規立地に余地を残したうえ、「再稼働を進めていく」姿勢を改めて示しました。

図

「一体改革」

「消費税上げ社会保障改悪」

 志位氏は野田首相が推進する「税と社会保障の一体改革」についてただしました。

 「一体改革」は、2010年代半ばまでに消費税を10%に上げるもので、首相は来年3月までの法案提出を明言しています。

 志位氏は、「一体改革」といいながら、社会保障については医療の窓口負担上乗せや年金の支給年齢引き上げなど切り捨てのオンパレードであり、「後期高齢者医療制度廃止」の公約は影も形もないと指摘しました。

 「消費税を10%に上げて社会保障を悪くする―これが政府の『一体改革』の正体ではないか」。志位氏がこう追及すると、首相は「社会保障のほころびに対応するもの」と強弁。一方で「消費税収を主たる財源とする」との考えを示しました。

 首相は所信表明演説で「中間層の厚み」が損なわれて格差が拡大してきたことを問題にしました。しかし所得の少ない人に重くのしかかる消費税増税は中間層をますます貧困に落とし込みます。

 志位氏は「貧困と格差を本気で問題にするなら、消費税増税は中止し、『応能負担』(負担能力に応じた負担)の原則で税制と社会保障のあり方を再構築すべきではないか」と批判しました。首相はこうした原則にはふれず、「税・社会保障全体としての再分配を総合的に勘案する必要がある」と述べ、消費税が再分配に逆行することを否定できませんでした。

普天間基地

無条件撤去へ米と向き合え

 「本気で『県内移設』が可能と考えているのか」

 志位氏は、沖縄・米軍普天間基地問題でこう首相に迫りました。

 沖縄では「県内移設反対」が島ぐるみの揺るがぬ意思になり、米国ではレビン上院軍事委員長らが「移設」は「非現実的、実行不可能」と述べている―志位氏はこう指摘し、「こうした現実が見えないのか。何の疑問も感じないのか」とただしました。

 ところが首相は「米国政府のコミットメント(誓約)は変わらない」と従来どおりの答弁。

 玄葉光一郎外相が「踏まれても蹴られても誠心誠意、沖縄のみなさんに向き合っていく」と発言した問題はどうか。志位氏は、新基地や危険な垂直離着陸機オスプレイなどを押し付ける日米両政府が「県民を踏みつけてきた張本人ではないか」(琉球新報)と沖縄で怒りの声があがっていることを示し、「向き合うべきは米国政府だ、普天間基地の無条件撤去を求め米国政府と本腰の交渉を行うべきだ」と迫りました。

 首相は、「普天間の固定化を避け、沖縄の負担軽減をめざすため、日米合意を踏まえ沖縄の方々へ誠意をもって説明する」と答え、新基地建設の日米合意に固執する姿勢を改めて示しました。





もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp