2011年9月13日(火)「しんぶん赤旗」

NHK日曜討論 市田書記局長の発言


 日本共産党の市田忠義書記局長は11日放送のNHK番組「日曜討論」に出席し、半年を迎えた東日本大震災の復旧・復興や福島原発事故の対応、今後の国会運営などをめぐって与野党幹事長と討論しました。


経産相辞任は当然 財界・アメリカ直結の野田新政権

 福島原発事故被害者の心情を踏みつけにする暴言を吐いて辞任した鉢呂吉雄前経済産業相の問題など、野田新政権の政治姿勢が議論になりました。民主党の輿石東幹事長は「おわびしたい」と陳謝する一方、「野党も国難(の認識)を共有し、協力をお願いしたい」と述べました。

 市田 鉢呂さんの問題でいいますと、ふるさとを奪われ、放射能汚染の恐怖にさらされている人びとの気持ちをまったく理解しない(発言です)。辞任は当然です。同時に、(野田佳彦)総理の任命責任も重大だと思います。

 野田新内閣についてですが、どの総理大臣もやらなかった二つのことを野田さんはやられたと思うんです。

 組閣前に自民、公明両党の党首だけで会談し、「3党合意を守ります」と、ひたすら自民、公明との連携をこい願う。「3党合意」には、増税問題も3党だけで協議しましょうという方向が明確にされています。

 それから、組閣前に財界詣でをやられた総理というのも初めてですね。(日本経団連会長の)米倉(弘昌)さんも大歓迎で、(野田首相は)これからは財界の意向も大いに受け入れながら、かつての経済財政諮問会議のようなものもつくっていきたいと(表明しました)。そのうえ、(民主党政調会長の)前原(誠司)さんが(野田首相の)所信表明の前にアメリカにいって“他国の軍隊と自衛隊が武力行使を共同でやれる”と(講演しました)。「財界直結」「アメリカ直結」という内閣じゃないかと思いますね。

 自民党の石原伸晃幹事長は、政府税制調査会の議論で復興増税に慎重意見が出たことに「驚いている」と述べ、「3党合意」を履行するよう輿石氏をけん制しました。

まったなしの生活と生業 医療・福祉機関の再建

 半年を迎えた被災地の現状をどうとらえ、復旧・復興に取り組むのか。「スピード感がない。復興特区、復興庁の創設を」(公明党の井上義久幹事長)、「特区は被災3県だけでなく、(日本)全体でやり仕事を呼びこむことが大切だ」(たちあがれ日本の園田博之幹事長)など、復興基本法に基づく“上からの復興”論が相次ぎました。市田氏は次のように述べました。

 市田 避難している人がまだたくさんいらっしゃいます。仮設住宅に移った人も、食事の供給がない、買い物にも行けない、交通機関がない、仕事がない、収入がない、雇用保険も切れる(状態におかれています)。そういう中でも、復旧・復興のために立ちあがろうとしている人々はいっぱいいらっしゃると思うんですが、いま国が手をうたないと限界にきていると思うんですね。

 ある調査機関の調査では、(被災地)沿岸部の企業で、事業の再建をあきらめたのは48%なんですよ。ここで手を打たなかったらもう人がいなくなってしまう。そういうぎりぎりのところにきている。「二重ローン」解消の問題でも、その「買い取り機構」は国が資金の出し渋りをやっているためにいまだにできていないし、医療・福祉機関は「集約化」の名による公立病院の統廃合(が進められようとしています)。民間病院・診療所は(公的)助成の対象になっていないですね。人が住み続けられるようにするためには、生活と生業(なりわい)の再建、そして医療や福祉機関について国が責任をもつことが大事だと思います。

放射能の除染、賠償は線引きせず国が全面的に責任を

 福島原発事故では直面する放射能汚染の除染や賠償問題などが議論され、市田氏は次のように述べました。

 市田 今度の福島原発事故についての政府の認識の問題がまず第一に問われていると思うんですよ。(事故で放出されたとされる放射性物質は)ウラン換算にしますと広島型原爆の20個分、セシウム換算で168個分です。人類史上かつてない大被害なわけで、この対策に総力をあげて立ち向かう姿勢が(政府に)欠けている。

 除染の話が出ましたが、20ミリシーベルト以上は国が責任をもつ、それ以外は自治体だと線引きをしないで、調査と除染については国が全部責任をもつ。

 賠償についても、一方的な線引きをやらないで、全面賠償を国と東電の責任でやる。東電について(先の通常国会で成立した原子力損害賠償支援機構法)は、全面的に財政的な支援をして存続させ、その他の原子炉メーカーやメガバンクについてはその責任を問わない。そういうやり方ではなくて、除染についても賠償についても線引きをしないで、全面的に国が責任をもつことをきちんとやっていくべきだと思います。

不要不急の支出改め法人税減税の中止を

 政府・民主党が「本格的な復興予算」と位置付ける第3次補正予算案の財源で、国が100%保有する日本郵政株の売却益が浮上しています。市田氏は「郵政株の売却はわが党は賛成ではありません。これは株式会社化が進むだけで、郵貯も郵便も守れなくなります」との立場を表明したうえで、次のように述べました。

 市田 財源問題でいいますと、(日本共産党は)不要不急の支出を削る(と提案しています)。例えば、原発推進のためのばらまき予算は今年度だけでも3500億円あるわけです。また、こんなときに政党が税金を山分けする政党助成金をもらっていていいのかと。これもきちんと削る。それから軍事費。せめて米軍への「思いやり予算」なんかはこの際、削る必要があります。

 収入を増やす問題でいいますと、国難だといいながら、大資産家にはものすごい優遇税制なんですよ。(株で取引したり配当にかかる税金は)いま10%ですよね。本来20%なのに半分にしている。ヨーロッパ、アメリカではだいたい3割ぐらいですよ。ヨーロッパなどでは、「もっと富裕者に増税してくれ」という話も出ているわけですから。こんなときに法人税減税をやるべきではない。そういうことをきちんとすれば増税をやらなくてもやっていけると思います。

密室政治やめオープンな議論を

 政府・民主党は13日召集の臨時国会の会期を4日間にとどめ、衆参の予算委員会開催は拒否しています。このもとで民主党は震災復興、税制改定、経済対策で自公との実務者協議を提案。自民・石原氏は「震災復興では合意ができている」と応じる姿勢をみせました。市田氏は臨時国会の対応で「一問一答方式の予算委員会もきちんとやるべきだ」と提起したうえで、次のように述べました。

 市田 自民、公明、民主の3党合意については、増税についての約束もしている。国民にとって最も重要な増税方針を3党で密室で決めていくのは、国会審議が形骸化してしまうと思うんですね。こういうやり方は、私は、密室政治、翼賛政治と国民からみられても仕方がないし、よくない。国会のオープンな場で堂々と議論すべきだと思います。





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