2011年9月11日(日)「しんぶん赤旗」
エジプト 警官殺害抗議デモ
イスラエル大使館襲撃
平和条約見直し 動き強まる
【カイロ=伴安弘】エジプトの首都カイロにあるイスラエル大使館が9日夜、デモ隊に襲われる事件があり、大使とその家族は本国に脱出しました。この事件に対し、国内から非難の声があがっています。エジプトでは、イスラエルのバス襲撃事件で犯人を追跡していたイスラエル軍がエジプト人警官5人を殺害した事件(8月18日)をめぐり、イスラエル大使の追放とイスラエル・エジプト平和条約の撤廃や見直しを求める動きが強まっていました。
この日はイスラエル大使館が入った建物にデモ隊が押しかけ、30人余りが大使館に付随した領事館に押し入り、文書などを窓から投げ捨てました。エジプトの警察隊と衝突、4人が死亡、1000人近くが負傷したとみられます。
一方、イスラエルの要請を受けた米オバマ政権は声明を発表し、エジプトに対し大使館を防衛するよう求めました。
警官殺害事件以来エジプトでは連日抗議行動が続き、「革命青年運動」などの青年組織と一部の左派政党などは事件直後、イスラエル大使の追放と1979年の平和条約の見直しなどを求める共同声明を出していました。
ムバラク前大統領の退陣を求める運動を2004年に開始したことで知られる組織「キファーヤ(もうたくさんだ)」は8月末、平和条約の撤廃を求める100万人署名運動を開始、条約撤廃を国民投票にかけることを呼びかけています。同組織はイスラム主義者、リベラル、左派運動家、アラブ民族統合主義者など広範な勢力を結集しています。
バス襲撃事件は、エジプトとイスラエルの国境沿いで起きました。犯人は特定されていませんが、シナイ半島に拠点を持つベドウィン(遊牧民)の「新しいタイプの組織」という見方も出ています。エジプトがイスラエル国境に十分な治安部隊を展開できなかったことが、こうしたテログループの活動を許す背景にもなっているとされていました。
イスラエルとエジプトの平和条約 イスラエルとエジプトの相互の国家承認、48年以来続く中東戦争の休戦、そして67年の第3次中東戦争でイスラエルが占領したシナイ半島からの撤退を内容としています。同条約はシナイ半島を西からA、B、Cの各地帯に分け、イスラエル国境と接する「C地帯」は非武装地帯とし、国際平和維持軍とエジプト警官のみを配置するとしています。一方で、イスラエル側はエジプト国境沿いに兵員4000人を配置できます。
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