2011年9月2日(金)「しんぶん赤旗」

主張

シリア人権弾圧

市民への武力行使を停止せよ


 中東シリアで民主化の要求が高まり、市民が公然と街頭デモを始めてからまもなく半年になります。アサド政権は平和的なデモを武力で激しく弾圧し続けてきました。しかし、大きな犠牲を強いられながらも市民の行動は勢いを増し、治安部隊が多数展開する首都ダマスカスでもデモが起きるまでにいたっています。

 政権維持のために国民に銃口を向けた政権が、正当性を問われるのは当然です。アサド政権は武力による市民への弾圧をただちにやめるべきです。

“人道に対する犯罪”

 国連人権高等弁務官の調査によれば、シリアでのこの間の市民の犠牲者は2200人を超え、活動家に対する拘束や拷問も頻繁に行われています。民主化を求める市民の行動は平和的なものです。しかし、アサド政権は行動に立ち上がった市民を「テロリスト、過激主義者」と非難し、戦車などの重火器まで動員して、非武装の市民に攻撃を加えてきました。

 アサド政権は緊急事態令の解除などの「改革」も発表しましたが、弾圧はその後もむしろ激しくなっています。人権高等弁務官は8月22日の声明で、「改革イニシアチブの信頼性は大きく損なわれた」と批判し、弾圧は「国際刑事裁判所に関するローマ規程」に定められた“人道に対する犯罪”にあたると指摘しています。

 同じ中東のリビアで、欧米の軍事支援を受けて内戦をたたかってきた国民評議会がカダフィ政権を倒したことで、アサド政権が孤立を深め、政権維持のために弾圧をさらに強める可能性も危惧されています。

 シリアで人権弾圧がさらに続けば、外国の介入を招く可能性が高まることも重大です。政権側の激しい暴力にもかかわらず、シリアの民主化勢力はこれまでのところ行動を平和的手段に限るとともに、外国の介入を許さない姿勢をとっています。民主化要求それ自体の正当性だけでなく、民主化勢力のこうした姿勢がその権威を強めています。

 一部には、リビアでの事態の推移を受けて、シリアでも市民を守るために外国の武力介入を容認すべきだとの声が強まっていると伝えられます。東アラブ地域に位置するシリアは、周辺諸国との間に複雑な政治的要素を抱え、外国が武力介入する事態になれば、イスラエルとの関係やパレスチナ問題、レバノンやイラン情勢などにも予期できない影響を与えます。なにより、武力介入はシリアの主権を侵す国連憲章違反の行為であり、民主化運動そのものに障害をもたらしかねません。

武力介入すべきでない

 アラブ連盟(22カ国・地域)は加盟国シリアへの内政干渉をひかえていましたが、8月には国連安全保障理事会の議論をにらみながら、暴力の「即時停止」をシリアに迫る声明を出しました。問題の平和的な解決に向け、アラブ連盟と域内の国々が外交努力を強める必要があります。

 外国の武力介入はなんとしても避けなければなりません。欧米はシリアに介入すべきでないし、シリア側も介入を招く事態を避けるべきです。アサド政権は市民に対する暴力をきっぱり停止し、市民が平和的に意思表明する権利を保障すべきです。





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