2011年9月1日(木)「しんぶん赤旗」

きょうの潮流


 だだっ広い平地の真ん中からのぼる1本の煙。かたわらの立ち枯れた1本の木。後ろに、丸屋根の建物が一つ▼一見、さびしくものどかな風景の写生と思うかもしれません。しかし実は、煙の火元は人の死体です。関東大震災から半月後。ところは東京・両国の国技館のすぐ近く。画家・竹久夢二のスケッチです▼昔、ここに軍服や軍靴をつくる工場がありました。のちによそへ移り、広い空き地が残ります。1923年9月1日、関東大震災。跡地へ逃げ込んだ市民たちを炎が襲い、人も物も燃やし尽くしました▼死者3万8千人とも4万4千人とも伝えられます。10万5千人という関東大震災の死亡・不明者の4割前後です。夢二はあくる2日、現場を訪れます。しかし、もがき苦しんだ人たちの形相をみると、どうしても描けません。半月後の写生は、最後の1人をだびに付す光景を描いています▼夢二が「緑の楽土にして」と願った跡地は、やがて横網町公園へと姿を変えました。「慰霊堂」や、震災時に虐殺された朝鮮人を追悼する碑がたちます。いま、一角の復興記念館で「竹久夢二 震災スケッチ展」が開かれています▼「若いころから社会主義に共感し、弱いものに寄り添って絵を描いてきた夢二」。孫の竹久みなみさんのあいさつ文に導かれて入ると、人を思いやり、理不尽に怒り、権力を皮肉る絵が並びます。夢二は、絵にそえる文に書きました。「自然は…一揺りにして…太古を取返した」。“(防災へ)次の東京を緑の都に”





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