2011年8月22日(月)「しんぶん赤旗」

農山地は「宝庫」 長野市訪ねる

木材・小水力・風力など 自然エネの資源


 甚大な被害をもたらす原子力発電に代わる自然エネルギーの本格的導入が重要課題です。農山漁村は、自然エネルギーの宝庫です。太陽光、小水力、木材資源、風力などの「資源」が数多くある長野市を歩きました。(中沢睦夫)


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(写真)間伐材や端材を砕き火力発電所(中央後方の施設)の燃料に=長野市「いいづなお山の発電所」

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(写真)農業用水の放水管を利用した小水力発電=長野市大岡

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(写真)農業用水のダムを利用した長野市の小水力発電所(手前の小屋)

 長野市には、広大な中山間地をふくむ自然豊かな地域があります。

「お山発電所」

 森林資源や建築廃材を火力発電に利用したのが「いいづな お山の発電所」です。長野県北部の飯綱山地域の林業、市内の建設、製材業などでつくる「長野森林資源利用事業協同組合」が05年4月から電力生産を始めました。

 地域の木材を有効利用する事業として、発電施設に限って国から2億9000万円の助成がありました。

 隣接する木材所で砕いた間伐材や建設廃材を発電所のボイラーに入れ、高圧蒸気で発電機を回すしくみです。

 同発電所の倉澤健夫所長によると、ボイラー温度は900度から1000度となり、低温焼却で発生する発がん性物質のダイオキシンは問題にならないといいます。

 同発電所は、一般家庭2000軒の使用量に相当する約1100キロワット時を中部電力に売電しています。倉澤所長は、「買い取り価格は少しずつあがっているが、平均で1キロワット時10円にならない」といいます。住宅用太陽光発電の買い取り価格は40円です。

 日本は、戦後に植林した森林資源が増えています。木質発電所が全国的に増える可能性があります。

 倉澤所長は「全国どこでも水と木があれば木質発電所はできる可能性がありますが、現状の買い取り価格では運営は厳しい」と指摘します。今国会で審議されている再生可能エネルギー固定価格買い取り法案の行方に注目しています。

農業用水使い

 山間地が多い同市南西部、旧大岡村に設置されたのが、「大岡浅刈(あさがり)小水力発電所」です。04年に調査をはじめ、05年の合併後に設計・建設、08年3月から発電を開始しています。

 出力は最大で6・7キロワット。近くにある大岡中学校、小学校の使用電力の半分程度になります。

 谷川の砂防ダムの農業用水を利用して発電水車を回しています。使用後はふたたび農業用水になります。

 機械設計の仕事をしながら自然エネルギーに興味をもつ男性(63)は、同ダムと小水力発電施設を見学した後に、「近くに電力を供給すると送電ロスも少ない。小水力発電ができる場所はあちこちにある」と感想を語りました。

 同市では「河川や農業用水で小水力発電の可能性がある」(環境政策課地球温暖化対策室)として、さらに1カ所の建設計画をすすめています。

自然エネ先進都市に

党市議団が提案 太陽光に融資を

 日本共産党長野市議団(野々村ひろみ団長、6人)は、原発に代わる自然エネルギーの本格的導入をすべきだと論戦と提案をしています。

 ことし6月の議会では、あべ孝二議員が本会議質問にたち、鷲沢正一市長が地元紙のアンケートにたいし原発政策は現状維持とこたえたことを批判しました。同市が新潟県柏崎刈羽原発から90キロに位置し、ひとたび事故がおきれば放射能汚染があると指摘しました。「(原発の)使用済み核燃料の処理方法はなく、原発の中止しか道はない」と訴え、期限を定めた原発の撤退と自然エネルギーへの転換を求めました。

 8月議会では、電力自給率160%を達成した岩手県葛巻町を視察した宮崎利幸議員が、「長野市は自然に恵まれ有利な条件がある。自然エネルギーの先進都市に」と訴えました。

 同市では、太陽光発電システム設置の補助制度を1999年度から地球温暖化対策として実施しています。毎時4キロワットまでは1キロワットあたり2万5000円、それを超える部分は同5万円の助成です(上限は個人7キロワット、事務所10キロワット)。国の補助金の実施もあり、希望者が増えています。

 また、党市議団は、自然エネルギーの本格的導入が地域経済の活性化にもつながると強調。太陽光発電を推進するうえで障害になっている高額な設置費の負担軽減策として、300万円を限度とする無担保無保証人の低利融資制度を提案しています。原資は市民債の発行でまかなう方法です。

 同市の水野守也環境部長は「検討してみたい」と答えています。

 長野県は太陽光発電への補助制度がありません。党市議団は、県議団と連携し助成策を要求しています。





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