2011年8月21日(日)「しんぶん赤旗」

ヨルダン原子力協定

財界意向で原発輸出

福島事故さなか民自公推進


 中東ヨルダンへ原発輸出が可能になる日本ヨルダン原子力協定について、民主、自民、公明3党が26日にも衆院外務委員会での承認を狙っています。福島第1原発事故収束の見通しも立たず、事故の全容も解明されていないなか危険な原発の輸出など許されません。 (遠藤誠二)


 協定は昨年9月にアンマンで署名。原発事故直後の3月31日、参院本会議で民主、自民、公明などの賛成で可決されました。(日本共産党、社民党は反対)

信頼失う

 しかし、4月13日に予定されていた衆院外務委員会での審議・採決は、日本共産党の笠井亮議員が「自国の原発の安全性が問われている。(原発事故として最悪の)レベル7とIAEA(国際原子力機関)が発表した翌日にこんな協定を承認したら、国際的な信頼を決定的に失うだけだ」と反対し、結局、見送りとなりました。

 民主、自民は、これをむし返し、強引に国会承認を行おうとしているのです。

 協定は、ウランの採掘、軽水炉の設計・建設と運転、放射性物質の処分などで日本がヨルダンに協力する内容。ヨルダンは同国初となる原発建設を計画し、三菱重工と仏アレバ社が共同で売り込んでいます。

新規市場

 民主党政権は、新興国に新たな市場をもとめる財界・大企業の意向を受け、原発の海外輸出を「成長戦略」の柱として官民一体で推進してきました。2010年にベトナムでの受注が決まり、署名済みのベトナム、ロシア、韓国に加え、トルコ、インド、南アフリカとも協定締結にむけて交渉中。菅直人首相は「自らベトナムの首相に働きかけ、原子力発電施設の海外進出が実現した」と誇示していました。しかし、福島原発事故を受け「もう一度、きちんとした議論をしなければならない段階にきている」(7月21日、参院予算委員会)と見直しに言及しました。

 ところが、5日決定の政府答弁書は、「原発の安全性は一義的には各国が自国の責任の下で判断するもの」と無責任な姿勢を表明。「わが国の原子力技術に対する期待は引き続き表明されており、世界最高水準の安全性を有するものを提供していくべきだ」と「安全神話」に固執し、原発輸出を継続していく方針を明らかにしました。松本剛明外相は同日の定例会見で、「これまでの外交交渉の積み重ねや国家間の信頼関係に留意して進める」と述べました。

 これを受けて民主党は「審議入りする環境が整った」として、9日の外務委理事会で審議入りを打ち出し、自民、公明も同調。日本共産党の反対を押し切って10日に趣旨説明を強行しました。

 笠井議員は「福島原発事故も収束せず、全国の原発のストレステスト(耐性試験)も終わっていない。相手がどうであれ、日本で安全性も確認できないものを輸出することは絶対にすべきでない」と批判しています。


 ヨルダンの原発計画 首都アンマン北40キロ、シリア国境近くのマジダルが建設予定地。当初、紅海に面したアカバ湾近隣に建設する計画を変更。2020年までに発電量100万キロワットで運転を開始し、合計4基まで増設する計画です。ロシア、カナダの各企業と、三菱重工・仏アレバの共同体が受注を狙っています。今年12月に発注先が決まると報じられています。同国は水資源が少なく、問題が多いといわれています。

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