2011年8月12日(金)「しんぶん赤旗」

主張

新・沖縄振興法

県民要求を根本にすえてこそ


 沖縄経済の振興開発のための沖縄振興特別措置法(2002年度〜11年度)が来年3月で期限切れとなることから、それに代わる新法作成の検討が始まっています。

 政府の沖縄振興審議会は7月、新法とそれにもとづく振興計画作りに向けた意見書を菅直人首相に提出しました。沖縄は、産業振興や雇用、教育、福祉などの分野でいまなお厳しい状況にあります。県民生活を向上させるために、県民の要求を根本にすえた新法と振興計画が必要です。

特性生かした経済振興

 沖縄県民の1人当たりの所得は、本土復帰以来、47都道府県中最下位が続いています。沖縄県の完全失業率も、全国平均の5・1%に比べ7・6%と最悪です。4次にわたる沖縄振興計画で約10兆円を投入していながら、こうした厳しい状況が続くのはなぜか、新しい振興計画をつくるうえで政府が検証することが必要です。

 沖縄の経済振興で欠かせないのは地元経済の足腰を強くすることです。政府が進めてきた道路や港湾などのハコモノを中心にした公共事業や、米軍基地強化のために金をだすというひも付きのやり方では沖縄経済の発展の力になりません。本土の大企業がもうけを吸い上げるだけで、地元企業の利益につながらないようなこれまでの振興のあり方を根本から改め、地元が主体となる沖縄経済をめざすことが重要です。

 沖縄の地元経済を強くするには第1次産業の発展に力を入れることが基本です。産業全体に占める第1次産業の割合は下がる一方です。生産額は90年代初めの約900億円から06年は約700億円と減少しました。主要作物であるサトウキビの生産も低迷を続けています。亜熱帯性気候の特性を生かして農業を思い切って発展させることなしに経済発展は困難です。農業などの第1次産業重視への転換が求められます。

 観光産業を発展させるには、沖縄の美しい海と豊かな自然を守ることが不可欠です。沖縄市の沖に広がる生態系豊かな泡瀬干潟を埋め立てて破壊するのでは、将来の発展の基盤をみずから掘り崩すことにしかなりません。悲惨な沖縄戦の跡をたどる平和学習も新・沖縄振興計画の検討課題です。

 見過ごせないのは政府が沖縄振興開発事業費を年々減らしていることです。10年前に比べ半分に減っています。沖縄は太平洋戦争末期に米軍に占領されて以来、一貫して基地の重圧を強いられてきました。それに対する償いとして政府が十分な財政支援を行う義務と責任があるのは明白です。米軍基地や「国策」のひものついた財政支援をやめ、県民本位で使えるようにすることこそ必要です。

基地なくす展望もって

 沖縄で製造業などの産業が伸び悩んでいるのは、産業立地に不可欠な広大な土地を米軍基地が奪っているからです。米軍基地の恒久化を前提に、その隙間を利用して経済振興を進めるいまのやり方では沖縄経済を発展させることにはなりません。北谷町のように基地を返還させその跡地で商業を発展させているところもあります。基地の跡地利用を含め、基地をなくす方向をめざすことが重要です。

 沖縄振興計画のなかで基地のない沖縄を展望することがいまほど必要なときはありません。





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