2011年8月11日(木)「しんぶん赤旗」

主張

市場の混乱

投機マネーの規制が急がれる


 世界の株式市場や為替市場の連鎖的な混乱が続き、東京市場では急激な円高が進むとともに株価は乱高下しています。

 アメリカやヨーロッパの財政と経済への先行き不安が広がり、巨額の投機資金が相対的に弱いと見た資産から逃避するなどして混乱を大きく増幅させています。

 日本も財政・経済ともに大きな困難を抱えていますが、円はドルやユーロに比べれば相対的に安全とされ、資金の逃避先として円が買われて円高になっています。

揺らぐ先進資本主義国

 G7(先進7カ国)の財務相・中央銀行総裁は8日、「金融安定化と成長を支えるために必要なあらゆる手段を講じる」とする声明を発表しました。しかし、具体策には何も言及していません。日本政府は4日、大規模な円売り・ドル買いに踏み切ったものの、一時的な効果しかありませんでした。

 ヨーロッパの政府債務問題は収束するどころか拡大に向かい、ユーロ圏の景気悪化の懸念も強まっています。

 アメリカでも政府債務残高が1000兆円を超えて膨らみ、高い失業率と家計消費の低迷が続くなど景気も停滞しています。政府債務が法定上限に達し、上限を引き上げなければ政府の支出が止まる寸前まで与野党の折衝がこじれました。からくも債務上限は引き上げられたものの、もし政府支出が止まれば米国債が“不渡り”になる瀬戸際でした。世界の決済通貨の約6割を占め、「基軸通貨」の地位を占めてきた米ドルへの信認はますます低下しています。

 ドルが揺らいでいるときに米連邦準備制度理事会(FRB)は9日、ゼロ金利を2年後まで維持すると決めました。追加緩和も検討しているといいます。金融緩和を続けても景気は回復せず、ドルがあふれていっそう自らの価値を下落させ、大量の余剰資金が新たな投機マネーを生んで市場を席巻する悪循環に陥っています。

 3年前に世界に広がった経済危機への対策として、大企業や大手金融機関の救済のために巨額の税金を投入したことが先進資本主義国の財政危機を深刻にしました。その負担を国民に転嫁する“財政再建策”が一段と景気を悪化させています。景気悪化が税収減を招き、さらに財政赤字を増やす矛盾に満ちた状況です。

内需主導へ抜本転換を

 日銀も4日、追加の金融緩和を決めました。大企業の手元資金は余りすぎの状態です。日銀からの資金は実体経済には回らず、投機熱を高めるだけです。

 繰り返される円高問題の根本には、一部の輸出大企業が雇用と下請けに犠牲を押し付けてコスト削減を強行し、輸出を拡大して円高をよぶ「円高体質」があります。円高から労働者と中小企業を守る緊急対策を取り、日本経済を“外需頼み”から家計・内需主導に大きく転換して体質を抜本的に改めることが求められます。

 世界の為替取引では1日当たり400兆円もの資金が動いています。これは1日当たり輸出額の百倍に上ります。通貨取引そのものに課税して投機取引を抑える制度の創設を含めて、投機マネーの国際的な規制を具体化するよう世界各国に働きかけることが重要です。投機マネーの暗躍を許さない徹底した規制が急がれます。





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