2011年8月5日(金)「しんぶん赤旗」

原発海外売り込み

国策会社 経産省・電力・原発メーカー一体

菅内閣 福島事故後も方針変えず


 東京電力福島第1原発事故で、原発が「未完成」で危険な技術だということが明らかになり、菅直人首相もトップセールスで売り込んできた原発の海外輸出が大きな問題になっています。しかも、この危険な原発を輸出しようとしているのは、経済産業省と電力会社、原発メーカーが一体となって設立した国策会社です。


 この会社は、「国際原子力開発」(JINED、東京・内幸町、資本金、資本準備金各1億円)。

 代表取締役社長は、東電元副社長で、現東電フェロー(副社長待遇)の武黒一郎氏です。今回の原発事故では、3月12日、1号機への海水注入問題で、東電側の連絡役として官邸の会議に参加していたことで知られます。

 唯一の常勤取締役に東電の高橋裕治理事が就任。非常勤取締役には、東電の武藤栄副社長ら電力会社幹部、監査役には、東芝、日立製作所、三菱重工業の3原発メーカーの役員が名前を連ねています。

生い立ちから

 生い立ちと出資状況をみると、同社は文字通り、官民一体となって原発の海外輸出を推進する国策会社です。

 昨年6月、経産省と、東京、中部、関西の3電力会社、東芝などの3原発メーカーの企業計6社で、ベトナムで計画中の原発プロジェクトの受注に向け「企画委員会」を設置。同7月には、企業6社で「国際原子力開発(仮称)」設立に向けた「準備室」を設置し、同年10月22日に同社を設立しました。

 出資構成は、東電20%、関西電力15%など9電力会社で計75%、原発メーカー3社が各5%、国が約9割出資している「産業革新機構」が10%となっています。

 同社設立に先だって昨年8月には、民主党の直嶋正行前経産相、武黒氏ら電力会社首脳、原発メーカーの首脳らが訪越。ベトナム側に原発受注を要請しています。菅直人首相も10月末、ベトナムを訪問、トップセールスで、ニントゥアン省第2サイトの原発受注を果たし、「日越両国の戦略的パートナーの象徴だ」と胸を張りました。

影響評価せず

 福島原発事故後、国会で、原発輸出問題が取り上げられ、枝野幸男官房長官は、ベトナムへの原発輸出に言及し、「従来の約束はしっかり守っていく」(7月21日、参院予算委員会)などと継続する考えを示しています。

 ところが、アジアに原発を売り込んで、事故が起こった場合、日本やアジアへの大気や海洋の環境影響評価がなされていないという問題点が指摘されています。

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