2011年8月1日(月)「しんぶん赤旗」
南米諸国 ドル依存脱却模索
米債務問題懸念
【メキシコ市=菅原啓】米国の債務上限引き上げ問題が難航し、デフォルト(債務不履行)の恐れが報道される中、南米諸国は米ドルに依存しない経済や欧米発の経済危機に共同で対処する方策を模索する動きを強めています。
“危機”共同対処案を論議
28日にペルーで開かれた南米諸国連合(UNASUR)の臨時首脳会議は、多くの首脳が米国経済の動揺が各国経済に及ぼす悪影響に懸念を表明する場となりました。
コロンビアのサントス大統領は、各国が外貨準備を米ドル建てで保有している事情から、米国の危機が長引き、ドルの価値が下がるにつれて、「われわれの外貨準備の価値が減少し、雇用創出の能力も奪われつつある」と発言。米国の事態に「傍観者であり続けることはできない」として、UNASURの緊急財務相会合を開催し、予想される事態に地域各国が共同で対処する措置を検討することを提案しました。
エクアドルのコレア大統領は、この提案に賛同しつつ、ドル建ての外貨準備こそが地域各国の経済にとって「もっとも深刻な問題の一つだ」と指摘。南米独自で資金を融通しあう地域準備基金や独自通貨で貿易決済を行う地域決済システムの確立などを提案し、ドルに依存しない地域経済を構築する必要性を訴えました。
会議の議論を経て、UNASURは8月前半にペルーとアルゼンチンで2回の財務相会合を開催することを決めました。
アルゼンチンのフェルナンデス大統領は29日、UNASUR加盟国の首脳が、世界経済の問題点やその地域への影響について「共通の見方をもったのは初めてのことだった」と語りました。
アルゼンチンの有力紙「パヒナ12」30日付は、この議論で口火を切ったのが従来、親米といわれたコロンビアのサントス大統領だった点を「驚くべきこと」と指摘。サントス氏が「反帝国主義でも、反米主義でもなく、実際的な結論として」米国の行動を無責任だと語ったと報じました。
親米傾向が強いとされるコロンビア政府が先頭に立って米国批判を展開せざるをえないことが、事態の深刻さを物語っています。
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