2011年7月14日(木)「しんぶん赤旗」

主張

九電メール問題

“やらせ”と癒着の根を絶て


 原子力「安全神話」はこうして押し付けられてきたのかと、憤りに堪えません。九州電力の「やらせ」メール問題です。

 詳細は近く九電が調査報告書を提出するといいますが、事件は政府・経済産業省が九電玄海原発(佐賀県玄海町)2、3号機の再稼働を要請するなかで起きました。地元で賛成する声が多数であるかのように装うために、九電が組織ぐるみで不正工作を行った事実は明白です。いくら「安全だ」といっても、これでは国民はとうてい信頼できません。

ウソと隠ぺいとカネ

 東京電力福島第1原発の事故後、定期点検を終えた原発再開の突破口としての玄海原発2、3号機の再稼働に向け国が主催した県民説明会(6月26日)が舞台でした。インターネットなどで中継された説明会では、視聴者からメールやファクスで意見を募りました。九電は事前に「一国民の立場で」運転再開に賛成する電子メールを送れと、社内や関係会社社員など数千人を対象に指示していました。

 この事実は、「しんぶん赤旗」2日付のスクープで明るみに出ました。この報道のさい、本紙の取材に九電は「そのようなことは一切していない」と全面否定しました。さらに、鹿児島県議会では4日の原子力安全対策特別委員会での日本共産党県議の追及に、九電は「依頼をした事実はない」と答えました。同県には九電の川内(せんだい)原発があります。原発立地自治体の議会さえ平気で欺き、事実を隠ぺいしようとしたのです。

 九電のウソは、日本共産党の笠井亮議員の6日の国会質問で崩れ去ります。事実を鋭く示した追及に、菅直人首相、海江田万里経産相がそろって「けしからんこと」と答弁し、九電の真部(まなべ))利応(としお)社長がその夜の記者会見で、急転直下、事実を認め、謝罪しました。

 原発の立地にさいして、電力会社や経産省は「住民の合意」をふりかざします。この説明会も、「住民の理解は得られた」というアリバイづくりの色彩が強いものでした。それが、電力会社の不正にまみれたものであったのですから、もはや原発再稼働の前提条件が崩れています。しかも、九電は事件発覚後、佐賀県が8日に開いた県民説明会に社員を送り込み、影響を与えようとしたことが明らかになっています。九電には何の反省もないのです。

 説明会を主催した政府や佐賀県が九電の“やらせ”を承知で放任していた疑惑もうかがえます。九電の責任だけでなく、政府や関係自治体の責任も徹底して追及し、正す必要があります。

あり得ぬ再稼働強行

 佐賀県知事にたいして、九電の歴代佐賀支店長ら幹部が「個人献金」を装いながら資金提供していたことも明らかになりました。玄海町長の実弟が経営する地元建設会社は、九電やその関連会社、原発がらみの公共事業を大量に受注し、巨額の利益を受けています。ウソと隠ぺいとカネで動く「原発利益共同体」に、いまこそ深くメスを入れなければなりません。

 “やらせ”や癒着でつくられた「安全神話」では、住民の安全は守れません。その根を絶ち、「安全神話」にとらわれない専門家の英知と力を総結集した厳格な検討無しに、強引に原発再稼働を迫るようなやり方は絶対許されません。





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