2011年7月8日(金)「しんぶん赤旗」
米民間研究機関
原発の役割 着実に衰退
「昨年、再生可能エネが上回った」
米民間研究機関ワールドウォッチ研究所はこのほど、「フクシマ以後の世界における原子力発電」と題した報告書を発表しました。世界の原発建設は緩やかに衰退する傾向にあり、2010年には、再生可能エネルギーの発電能力が原発を上回ったと指摘しています。報告の要旨を紹介します。
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この報告は、日本の大惨事に対する反応についての概要を最初に公表したものだ。しかしフクシマの危機が起きる3月11日の前でさえ、世界の原子力産業は核エネルギーが緩やかに衰退していくことを止められずにいた。
この15年間、発電能力の年間の伸びは、再生可能エネルギーが原子力を上回り続けた。10年には、世界中の再生可能エネルギーによる発電能力は、風力が1億9300万キロワット、小規模水力が8000万キロワット、バイオマスが6500万キロワット、太陽光が4300キロワットで総和が3億8100万キロワットとなり、原発の3億7500万キロワットを初めて上回った。
11年4月1日現在、世界中で稼働している原子炉は437基で、02年より7基減少している。国際原子力機関(IAEA)によると、現在建設中の原発は14カ国で64基。これに対してピーク時だった1979年は233基の原子炉が建設中だった。
08年には、核時代が始まって以来初めて、原子炉の新規稼働はなかった。09年は2基、10年は5基、11年は3月までに2基だった。この2年3カ月で11基が閉鎖された。
09年、世界全体の原発による発電量は、前年より2%減少した。4年連続の減少だった。原発の役割は着実に衰退しており、世界の発電量に占める割合は13%だ。
世界で操業中の原子炉の平均稼働年数は26年だ。原発会社の中には、原子炉の寿命を約40年と予想するところもある。すでに閉鎖した130カ所の平均稼働年数が22年であることを考慮に入れると、稼働年限をその2倍としている見積もりはかなり楽観的だ。
フクシマの惨劇の明白な影響は、稼働年数がまったく違った見方をされているところに現れている。ドイツ政府は30年以上のすべての原子炉の稼働を止めることを決めた。
この報告書では、毎年何基の原子炉が閉鎖されるかを見積もるため、稼働中もしくは建設中のすべての原子炉の寿命を40年と想定している。それによって操業中の原子炉の数を維持するために、今後数十年間で操業を開始しなければならない最小限の原子炉数の算定が可能となる。15年までには、現在建設中のものに加え、さらに18基が必要で、ほぼ3カ月に1基のペース。次の10年間では191基が必要で、19日ごとに1基のペースとなる。
フクシマ事故後の劇的な状況は、国際的な経済危機を助長し、原発擁護者が直面している問題の多くをさらに悪化させている。もし、国際的な原子力産業に明確な衰退傾向を有望な将来へと反転できるという兆候がないなら、フクシマの大惨事はその衰退をさらに加速しそうだ。
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