2011年7月7日(木)「しんぶん赤旗」

けいざいそもそも

電気料金の仕組みって


 6カ月連続で電気料金が上がっています。電気料金ってどうやって決まっているの? 仕組みを調べました。 (中川亮)


「総括原価方式」で

 資源エネルギー庁の担当者に話を聞きました。

 「電力を供給するために必要となる設備や人件費などの費用に、一定の利潤を加えて電気料金は決まる」といいます。この仕組みを総括原価方式といい、電力会社の安定的経営を保証しています。

 根拠となる法律を調べました。電気事業法第1条は「電気事業の健全な発達を図る」ことを目的にし、第19条に「料金が能率的な経営の下における適正な原価に適正な利潤を加えたものであること」と定められています。

 この法律と料金の仕組みの下で、民間企業なのに、電力会社は必ずといっていいほど利益を得られます。

 電力会社の営業費には、従業員の給与や役員報酬といった人件費、原油などの燃料費、原発の開発のための電源開発促進税、修繕費、廃炉費用、コマーシャルなど広報活動にかかわる普及開発関係費なども含まれています。

 さらに法律を見ると、電気料金の値上げを行う場合(自由化された部門を除く)、人件費や資材調達費などについて経済産業省の査定を受け、経産相の認可が必要です。値下げの場合は、経産省への届け出で済みます。

産業向けは割安に

 資源エネルギー庁のホームページによると、電気料金は、産業・業務向けに比べ、一般家庭向けの方が割高です。料金は、家庭向け、産業・業務向けのどちらも総括原価を基本にしていますが、さらに企業や家庭など個別の需要家ごとにそれぞれ異なる原価を割り振る仕組みになっています。

 一般家庭には、電圧を低くするために、配電用変電所や変圧器などの設備が必要になり、その費用が余分にかかるため割高となります。一方、産業・業務向けは高電圧で受電しているため、設備費用などは比較的少なく割安となります。

 東京電力の元社員に聞きました。

 「今の電気料金の仕組みは、大企業向けの電力を効率的に送ることを前提にしています。高電圧で送電すると、送電ロスが少なくなるので電気を効率的に送ることができます。東電は、経済成長に伴い必要となる電力を供給するため、大容量・高電圧の原発と火力発電所を建設しました。この電源開発と今の料金の仕組みでは、必然的に大企業は安く、家庭向けは高くなります。家庭用の電気の供給は、太陽光や風力、小水力など、身近なところでの発電を利用する地産地消の方向で進めれば今とは違った料金の決め方ができるのではないでしょうか」

 東電など電力10社は、発電に必要となる原油や液化天然ガス(LNG)などの燃料価格が上昇したことを理由に、8月の電気料金を値上げすると発表しました。6カ月連続の値上げです。燃料価格の変動は燃料費調整額として、自動的に料金に跳ね返ります。国の認可は必要ありません。

求められる見直し

 ほかにも問題ある料金転嫁があります。

 今年4月から太陽光促進付加金が使用者から徴収されています。再生可能エネルギーの普及を進めることを目的にしたものです。一般家庭が太陽光パネルで発電し、使用しなかった余剰電力に限り、電力会社が買い取ります。しかし、買い取りに要した費用は、電気料金に転嫁されます。

 東電福島原発事故で被害を受けた地元の住民に対して東京電力は賠償責任を負っています。賠償金の負担は電気料金に転嫁されてしまうのでしょうか。

 「賠償金の負担は電気事業の原価ではないので、それを理由に料金を値上げしてはいけません」。税理士で立正大学法学部客員教授の浦野広明氏は、こう強調します。

 「電気料金など公共料金の契約は生活に必要なもので、料金は誰もが支払わなければならないのです。憲法には『公共の福祉』という言葉があります。それは本来の意味で言えば、大企業などの営業の自由が国民大衆の人権侵害にならないようにするということです」

 電気料金の決定の仕組みも、憲法に沿ったものに見直しが必要だと分かりました。

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