2011年7月7日(木)「しんぶん赤旗」

公的保育を解体へ

作業部会 中間とりまとめ了承


 公的保育の解体を狙う「子ども・子育て新システム」を議論してきた作業部会が6日に内閣府で開かれ、事務局が示した中間とりまとめ案が了承されました。利用者負担のあり方などの課題を多く積み残す一方、国と自治体が保育サービスを提供する義務を負う公的保育は解体される内容です。

 現行の保育サービスそのものを提供する現物給付の仕組みを「個人に対する給付」(現金給付)に変え、市町村の役割を「保育の必要性を認定」するだけにしています。「幼保一体化」によって待機児童をなくすとされていましたが、現行の保育所と幼稚園を統合する新たな「総合施設」には、待機児童の8割以上を占める3歳未満児の受け入れを義務づけないため、待機児童解消がすすむ保証はありません。事業者の指定制度を導入し、営利企業など「多様な事業主体の参入を認める」としました。

 費用負担のあり方などは、「残された検討課題」とされ、今秋をめどに地方自治体などの関係者との協議が再開されます。新システムの財源は、消費税増税頼みとなることから、消費税増税法案とともに「早急に法案が提出できるよう、速やかに検討を再開」することが確認されました。年末までに法案大綱がまとめられる見込みです。

 新システムは、2013年度の実施を目指して議論されてきましたが、中間とりまとめでは、実施時期については明示されませんでした。法案提出時期と実施時期を書き込むかどうかについては、座長である末松義規内閣府副大臣に一任されました。


解説

保育の中身の議論なし

消費税増税頼みの矛盾も

 「子ども・子育て新システム」の実施に向けて、利用者の負担のあり方など多くの課題が議論されないまま、中間とりまとめが強行されました。作業部会の委員からは、「今後検討する、との文言があまりにも多すぎる」との発言が相次いだほどです。

 昨年9月から、基本制度、こども指針、幼保一体化の三つの分野で作業部会が行われてきました。しかし、当初示された議論とりまとめのスケジュールに沿って日程をこなすだけで、ほとんどの論点は素通りの形で進みました。東日本大震災の発生で、1カ月も議論が中断したにもかかわらず、「税と社会保障の一体改革」にあわせるかたちでとりまとめが急がれました。

 「すべての子どもに質の高い学校教育・保育を」などと耳あたりのいい言葉が示されたものの、歴史も役割も違う施設を一緒にする「幼保一体化」の作業部会では、子どもにとって最も肝心な一元化される幼児教育と保育の中身の議論はほとんど行われていません。

 新システムは、消費税の増税をあてにした制度となることも明らかになりました。消費税増税を明言している政府・与党「社会保障・税一体改革成案」を引いて、「税制抜本改革とともに」法案を提出するとしています。“子育て支援”といいながら、子育て世代にも重く負担がのしかかる消費税増税だのみ。東日本大震災で被災した地域の子育て世代にも容赦なくのしかかります。消費税増税なくしては実施できない、という根本的な矛盾を抱えています。

 多くの課題を残す拙速な中間とりまとめが行われた一方、当初から一貫して変わらないのが公的保育の解体です。営利企業の参入や、市町村が関与しない直接入所になることに関し、委員からも懸念が出されましたが、結論先にありきで、議論が進みました。公的保育を解体し、市場化を進めれば、“保育は金次第”となります。

 中間とりまとめは、「すべての子どもが尊重され、その育ちが等しく確実に保障されるよう取り組まなければならない」と美辞麗句を並べたてますが、公的保育を解体しておいて、すべての子どもに健やかな成長を保障することは到底できません。 (鎌塚由美)





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