2011年7月6日(水)「しんぶん赤旗」

松本復興相辞任

被災地に向きあう姿勢ない「上から押しつけ」

菅内閣の姿勢そのもの


 被災者をないがしろにする暴言を繰り返して閣僚を辞任した松本龍復興担当相。しかし、「知恵を出さないところは助けない」などという上からの復興の押し付けこそ、菅内閣が被災者に対して取っている態度にほかなりません。松本氏の辞任ではすまされず、菅内閣の姿勢そのものが問われています。


財界戦略を推進

基本法と構想会議

 民主、自民、公明が合意し6月20日に成立した復興基本法。理念には、「一人ひとりの被災者の生活基盤を国の責任で回復する」という復興の要が欠落する一方、財界の「新成長戦略」そのままに「国境を越えた社会経済活動の進展への対応」「21世紀半ばにおける日本のあるべき姿を目指(す)」ことを列挙しています。

 これは、大企業の競争力強化のため自由貿易や規制緩和を推進する狙いを示すものです。復興の進め方も、住民合意ではなく、国が基本方針を定め、これを踏まえて「措置を講じる責務」を地方自治体に押しつける逆立ちしたものです。

 基本法が法的お墨付きを与えた復興構想会議の初会合で菅直人首相は、「ただ元に戻すという復旧ではなく、改めてつくり出すという創造的な復興をお示しいただきたい」と述べ、「上からの復興押し付け」の姿勢をあらわにしました。

 同会議が6月25日に発表した「提言」は、民間企業参入の「水産特区」の創設、財源として「基幹税を中心に多角的な検討」を行うことを盛り込み、被災者にも負担を強いる消費税増税に道を開くものとなりました。

 提言の結びでは、「つい『公助』や『共助』に頼りがちの気持ちが生ずる。しかし、たのむところは自分自身との『自助』の精神」などと述べ、国の責任を投げ捨てるものとなっています。

水産特区・TPP

「構造改革」押しつけ

 大震災に乗じて、財界の求める「構造改革」を押し付けようとする姿勢も重大です。

 導入が狙われている「水産業復興特区」構想が典型です。沿岸漁業を守り育ててきた地元の漁業者らに限られている漁業権を規制緩和で企業にも与え、利益追求を自由にさせようというものです。漁港の集約化も狙われています。

 復興に向け、漁業者が一体となって取り組んでいかなければならないとき、「企業が参入すれば浜に混乱と対立を引き起こす」(宮城県漁業協同組合)と、漁業者は分断の持ち込みだと強く反対しています。

 加えて復旧・復興に取り組んでいる被災地の農林水産業に追い打ちをかけるとして反対の声が上がっている環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加問題。菅首相は「いろいろな状況を総合的に判断してまいりたい」(6月3日参院予算委員会)と固執しています。

 復興を妨げるとして反対論が強い消費税増税についても、政府は、「社会保障と税の一体改革」と称して、2010年代半ばまでに5%引き上げる方針を決定。菅首相は「歴史的な決定」と持ち上げました。

 日本共産党の志位和夫委員長は3日、「国民の暮らしに深刻な打撃を与え、救援と復興に事業を根本から破壊する消費税増税に手を付けるなど論外」と批判しました。

原発推進・再稼働

「利益共同体」を温存

 被災者・被災地そっちのけは、原発問題でも共通しています。

 政府が審議入りを急ぐ原子力損害賠償支援機構法案は、事実上破たん状態にある東京電力を存続させ、公的資金も投入して賠償を行うもの。東電に内部留保をはきださせることや大銀行に債権放棄を求めることもなく、政官業癒着の「原発利益共同体」を温存するものです。国が責任をもって東電に全面賠償を果たさせることにはなりません。

 「白紙から見直す」とした「エネルギー基本計画」の見直しは手つかずで、逆に首相は、5月の訪欧時の演説で原子力を“エネルギーの4本柱”の一つに位置づけるなど原発依存の継続を宣言しています。

 菅内閣は、福島原発事故の収束もできていないのに、定期点検などで停止中の原発の「安全宣言」を行い、地元自治体に再稼働を要請。政府が国際原子力機関(IAEA)に提出した報告書であげた「地震対策の強化」などもとられていないにもかかわらず、海江田万里経済産業相を佐賀県に送り込み、玄海原発の再稼働を求めるなど、上から住民に危険を押し付けようとしています。

 これに対し、各県の知事からは「“安全詐欺”になってはいけない。津波対応だけで『安全だ』という言い方は問題がある」(泉田裕彦新潟県知事)などの厳しい声が噴出しています。





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