2011年7月4日(月)「しんぶん赤旗」

米財政 火の車なのに…

債務上限引き上げ難航


 【ワシントン=小林俊哉】米国では、連邦債務の法定上限引き上げをめぐる与野党交渉が難航しています。最大の要因は、財政立て直し策をめぐる見解の相違。ことに政権側が打ち出した富裕層増税に野党・共和党側が反発しています。


政権「富裕層へ増税」/野党「社会保障削減」

 現在の連邦債務上限は2010年2月に議決された14兆2940億ドル(約1150兆5000億円)です。財政状況の悪化が止まらず、債務はすでに5月、上限に到達。米財務省は、年金基金などからの資金流用で債務不履行(デフォルト)を回避していますが、それにも限界があり、8月2日には資金が底をつく見込みです。

 オバマ大統領は6月29日の記者会見で、デフォルトに陥った場合米国債の暴落など、「米国経済にもたらす結果は甚大かつ予測不能だ」と指摘。上限引き上げで早期に与野党が合意にこぎつけるよう議会に要求しました。ホワイトハウスは今月22日までに引き上げを行わなければ、財務活動に悪影響が出るとしています。

米の信任損ねる

 米連邦準備制度理事会(FRB)のバーナンキ議長も、米国に対する国際的信任が損なわれると警告。米ドルと米国債の果たしている「特別な役割」が揺らぐことへの懸念を表明しています。

 しかし、バイデン副大統領が主宰して進めてきた与野党協議は、共和党側が席を立って暗礁に乗り上げています。

 オバマ政権は、医療費の無駄や軍事費の抑制、行政のスリム化などの歳出削減とともに、増税が必要だと主張。富裕層向け減税の打ち切り、石油会社への優遇税制の廃止などを打ち出し、「バランスのとれた方策」を訴えています。

 共和党側は富裕層増税に絶対反対。医療や社会保障、教育など国民生活分野を標的にして大規模な歳出削減を求めています。

共和党批判の声

 下院では共和党が過半数を占めるために、こう着状態が続くと、オバマ政権にとって“最悪の事態”も予想されます。しかし、富裕層増税に反対しながら、国民向け施策の大幅カットを訴える共和党の主張には批判も出ています。

 米議会の金融危機調査委員会で委員長を務めたフィル・アンジェリデス氏は、金融危機を引き起こし、その対応で財政悪化を招いたのは米金融街(ウォール・ストリート)の責任だと指摘。「金が金を生み出す経済から、金が雇用と真の繁栄を生み出す経済への転換」(米紙ワシントン・ポスト)こそが必要だと強調し、それに背を向ける共和党の姿勢を批判しています。





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