2011年6月26日(日)「しんぶん赤旗」

なぜ「原発からの撤退」か

BS11 志位委員長 大いに語る


 日本共産党の志位和夫委員長は25日放映のBS11の番組「リベラルタイム」(毎週土曜放映)に出演し、原発からのすみやかな撤退と、自然エネルギーの本格的導入を目指す党の「提言」について大いに語りました。コメンテーターは雑誌『リベラルタイム』の渡辺美喜男編集長、アシスタントは石田紗英子氏。その内容を紹介します。


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(写真)「BS11」の「リベラルタイム」に出演する志位和夫委員長

菅内閣――原発推進の方針をつづける

 石田 今月は、月間テーマを「原発は必要か」ということでお送りしています。今回は「エネルギー政策の抜本的転換」ということで日本共産党委員長の志位和夫さんにお越しいただいております。

 渡辺 志位さん、最近、菅直人総理が「脱原発」をテーマに解散・総選挙に打って出るのではないかという話まで出てきているんですけれども、どうお考えですか。

 志位 いま、被災地のみなさんの願いは、一刻も早く復興の光が見えるような政治をしてほしいということだと思います。(いま「解散・総選挙」というのは)およそ、そういうところからかけ離れた議論だということが一つです。それから、菅さんの立場は「脱原発」ではないんですよ。

 渡辺 そうですか。自分ではそう主張していますよね。

 志位 それは違いますよ。実は民主党政権というのは昨年、原発をさらに14基も増やすという、とんでもない増設計画を決めたんですね。先日、私は菅さんと党首会談をやって、「この計画はもうやめなさい」といったら、一応、「白紙で見直します」ということをいったんですけれど、その後、国際会議で「世界最高水準の安全な原子力発電」を進めますと(表明した)。原発を進めるというのが菅さんの立場です。私は、原発からの撤退がいまこそ求められる状況だと思います。

「異質の危険」――この技術を許容していいのか

 渡辺 なるほど。この間、共産党から、福島原発事故が明らかにしたものは何かということでこんな発表がありましたけれど(日本共産党の提言「原発からのすみやかな撤退、自然エネルギーの本格的導入を」の内容をフリップで示しながら)、東電の福島原発事故というのは「空間的」、「時間的」、「社会的」にどこまでも広がる事故だと、こういうような記述がありましたね。これはどういうことですか。

 志位 国民のみなさんは、いまの福島の事故を見て、他の事故にはない何か異質なものをその中に見ていると思うんですよ。飛行機事故とも違う。自動車事故とも違う。特別の「異質な危険」を見いだしていると思うんです。といいますのは、原発の事故というのは、ひとたび莫大(ばくだい)な放射能が外部に漏れ出してしまったら、それを抑える手段がないのです。そして、「空間的」にどこまでも広がっていく。実際に日本列島のあちこちまで広がっています。また、「時間的」にというのは、放射能による被害というのは、急性障害もありますけれども、晩発性の、たとえば癌(がん)などになる危険の確率が出てくるんですね。何十年先まで危険が及ぶ。そして、「社会的」にというのは、一つの地域社会が成り立たなくなるような危険をもたらす。「空間的」にも、「時間的」にも、「社会的」にも限度がない。このような事故というのは、原発事故以外に見当たらないでしょう。そういう「異質の危険」がある技術を許容していいのかということが問われていると思うんですね。

いまの原発は「本質的に未完成で危険」とは

 渡辺 2番目に、いまの原発技術は「本質的に未完成で危険」なものという記述がありますけれども、社会的に許容できる技術なのかどうか、それを考え直すべきだと、こういうことなんですね。

 志位 はい。「本質的に未完成で危険」といった場合に、原発の危険の一番の本質は何かというと、端的にいって莫大な「死の灰」にあると思うんですよ。100万キロワットの原発というのは、1日に広島型原爆の3発分の「死の灰」をつくるんです。年間で1000発分の「死の灰」がたまることになる。こういう途方もなく莫大な「死の灰」を抱えている。これを安全に閉じ込めておく技術があるか。ないことは、「スリーマイル」、「チェルノブイリ」、「福島」と証明されたわけです。

 そしていまの原発は、「軽水炉」が中心ですけれども、「軽水炉」というのは炉心をたえず水で冷やし続けてかろうじて安定が保たれる。水がなくなったら途端にメルトダウン(炉心溶融)が起こって大変なことになる。水がなくなった場合に、原子炉を安定の方向に向けていく力が働かないんです。このように「軽水炉」という炉は本質的な不安定性を持っているものなんです。

 そのうえ、「使用済み核燃料」を後始末する技術はまったくありません。いま青森県六ケ所村に「再処理工場」がありますけれども、事故だらけで稼働していません。もし稼働したとしても、ものすごく危ない工程を経て、「高レベル放射性廃棄物」がつくられる。これを何万年も管理するということになるわけです。

 渡辺 だけど、日本政府は、原発は未完成で危険なものとしてきませんでしたよね。「安全だ、安全だ」といい続けてきたじゃないですか。これどうなっているんですかね。

 志位 これが一番の問題ですね。たとえば、「スリーマイル」と「チェルノブイリ」と二つの過酷事故を受けて、IAEA(国際原子力機関)が過酷事故を防ぐための対策を取りなさい、起こった場合に抑える対策を取りなさいと1988年に勧告を出したんです。ところが日本政府は、1992年に、「日本では過酷事故は起こりえない」ということを原子力安全委員会が決めてしまうんです。そういう事故は起こらないと決めてしまうから、対策も取らない、起こった後の備えもないということになった。それがこういう事態につながってしまったということです。

「再処理工場」――「高レベル放射性廃棄物」の処分方法なし

 渡辺 「高レベル放射性廃棄物」の処分についても見通しがまったくない。

 志位 まったくないですね。先ほどいった「再処理工場」は、私は東海村に実験施設があるので見に行ったことがあるのですけれども、使用済み核燃料があるでしょう。これをせん断するんですよ。せん断して硝酸の入っているプールで溶かすんです。そしてプルトニウムとウランと「高レベル放射性廃棄物」に分けるんです。この工程自体がものすごく危険なのですけれども、結局、「高レベル放射性廃棄物」がこの過程でつくられるわけです。それをガラスの中に閉じ込めて地中に埋めるというのですが(「地層処分」)、何万年も放射能が残るわけで、何万年先の人類に残してしまうことになる。だから笑い話ですけれども、何万年先に日本語がわかる、あるいは英語がわかる人間がいるだろうか、だから(誰が見てもわかる)印を考えなければいけないと(笑い)。それくらいとんでもない話なのです。処分方法もない、どこかに埋めるかといってもそんな場所はない。

地震と原発――どのように壊れるかはわからない

 渡辺 そうですね。各地で反対されているし。3番目に世界有数の地震・津波国に集中立地するという問題点ですね。いついかなる大地震が再度起きるかもしれない。

 志位 今度の事故を踏まえて、地震学界のみなさんも、「日本海溝で(震源域が)400キロにもおよぶ、マグニチュード9の地震が起きるとは考えていなかった」と(言っています)。これは怠慢ということではなくて、やはり地震の学問的知見がまだそういう段階だったわけです。今度初めて400キロの巨大地震が起こるということがわかった。そうなりますと、地震学の知見を一から見直さなければならないということを、地震学界のみなさんは言っています。

 そして地震が起きたときに、実際に、原子力プラントのような複雑な機械がどんなふうに応答するのか。たとえば原子炉本体は地震から守られたとしても、複雑なパイプや装置がついているでしょう。どこか1カ所に力が加わってしまったらそこが壊れるかもしれない。これは本当にわからないわけです。

 渡辺 志位さんは、民主党政権が浜岡原発(静岡県)を止める要請をしたことは、よかったということですか。

 志位 浜岡(原発)についていいますと、東海地震の想定震源域の真上ですから、特別に危険だということははっきりしているわけですから、止めたことはよかったけれども、しかし廃炉にしろとはいっていないでしょう。

 渡辺 そうですね。

 志位 一定の対策をやったら結構ですよということになっているわけです。

 渡辺 でも(地震の)確率は87%あるんですからね。

 志位 そうなんです。これは廃炉にするしかないんですね。

原発の最悪の事故とは何かはあらかじめ想定できない

 渡辺 そうすると原子力発電所には絶対安全というのはないんですかね。

 志位 ありませんね。どんな技術でも絶対に安全の技術というものはないですよ。たとえば飛行機の事故、これは本当に起こしてはいけないけれども、しかしどんなに安全対策をやっても、事故はある程度起きますでしょう。自動車の事故も起こります。どんな技術も、人間の技術ですから、歴史的・社会的な制約があるわけです。

 そのうえ、原発についてとくにいいたいのは、第1番目の問題(「異質の危険」)ともかかわるんですけれども、その原発が重大事故を起こした場合に、最大・最悪の事故がどのくらいになるかという想定があらかじめできないんですよ。

 今度の福島の大事故で大気中に放出されたのは、(炉心にあった「死の灰」の)1%から2%だといわれているんです。ところが「死の灰」が40%、50%出る事故が起こらないかというと、起こり得るんですよね。100%出る事故だって起こり得る。そういう最悪の事故が起きてしまったら、どれだけの被害が起こるか。そのことを、あらかじめ想定することは不可能です。

 そうするとこういうことになるんです。「事故のリスク(危険)」というのはどうやって決まるか。それは、「事故の起きる確率」かける「事故の被害の大きさ」でしょう。これで「事故のリスク」が決まるでしょう。ところが原発では、たとえ事故の起きる確率が低くても、最悪の事故の被害の大きさは想定できない。そうしますと、「事故のリスク」もあらかじめ想定できないということになるんですね。

原発で客観的な「安全基準」を決められるか

 渡辺 志位さん、もうちょっと安全についてうかがいたい。原発に安全はない?

 志位 この問題をもっと突き詰めて、技術における「安全基準」とは何かということを考えますと、どんな技術でも、「安全基準」を設定した場合、それが本当に客観性を持っているかどうかが何によってはかられるかといったら、実験をするか、あるいは実際にそれを使ってみるか、こういうことによってはかられるわけですね。たとえば飛行機にしても自動車にしても、「安全基準」をつくる、そして実験をしてみますよね。そして実際に使ってみて不具合が起こる。そうしたら「安全基準」を高めてもっと安全なものにする。こうやって技術というのは発展しますよね。

 それでは原発で客観的な「安全基準」を決められるか。たとえば、ある「安全基準」を決めて、この「基準」をクリアしたら、これは安全な原発ですよと、太鼓判を押せるか。そんな「基準」を決めたとしても、これは実証できないでしょう。

 渡辺 なるほど。

 志位 たとえば、地震に対する原発の「安全基準」を実証しようと思ったら、実際に稼働している原発をゆすってみて壊れるかどうか実験をやらなければならない。

 渡辺 実証実験ができない。

 志位 そうです。「安全基準」の実証は(原理的に)できないんです。そうするとどういうことになるかといったら、結局、机の上の計算で「安全だ」ということをいうだけのものにならざるを得ない。

 もちろん、私は、(原発事故の)危険を最大限回避する、危険を少なくするための措置は必要だと思います。それを求めていきます。しかし、ある「安全基準」を決めて、これをクリアしたら「安全です」「どんどんつくりましょう」、こういう考え方は、原発においては成り立たないということをいっておきたいと思うんですね。

再生可能エネルギーを最大限のスピードで開発して

 渡辺 いままでそういう考え方で来たわけですよね。だから共産党は原発からの撤退をいうわけですね。

 志位 そうです。撤退の政治的決断が必要だと。何年間で撤退するか、どういうエネルギーにするか、これは国民の議論で決めていけばいいけれども、まず撤退の決断が必要だといっています。

 渡辺 5年から10年で撤退するというのはどのようなタイムスケジュールで、どういうふうにやるんですか。

 志位 考え方として、先ほどのべた原発が持っている「異質の危険」からして、できるだけ早く撤退した方がいい。早ければ早いほどいいんです。ただやはりエネルギー需給のことを考えたら、混乱を避けなければならない。それからもう一つ考えなければならないのは、安易に化石燃料をどんどんたけばいいかということでもないと思うんですね。

 渡辺 CO2のこともあるし。

 志位 ええ。ですから再生可能エネルギー、自然エネルギーを最大限のスピードで開発する。この可能性は大いにありますから、それを同時並行的に進めながらやろう。そういうことを考えたら、だいたい5年から10年以内という、それくらいのめどで撤退を完了すべきではないかということをいっています。

 渡辺 当面は火力、LNGでやろうということですか。

 志位 いま原発の再稼働が問題になっていますよね。政府が再稼働をOKしていますけれども。

 渡辺 経済産業大臣は要請した。

 志位 これはひどい、姑息(こそく)な対策で、たとえば水素爆発を避けるためにドリルを用意するとかいうものなんですよ。(原子炉建屋に)穴を開けるための。もうお話にならないような姑息な「対策」で「安全宣言」をしてしまったけれど、これを許すことはできません。(再稼働ができず)原発が止まったということになりましたら、一時的にLNG――液化天然ガスを使うこともあり得ると思います。ただ、できるだけ速やかに自然エネルギーの方に移行して、地球温暖化防止のうえでの責任を果たしていくということが必要です。

イギリスでは巨大洋上風力発電――新たな産業や雇用にもつながる

 渡辺 産業界は、産業の衰退を招くのではないかという危惧を抱くでしょう。そのあたりはどうなんですか。

 志位 日本の産業を興していく上で、原発に依存していくことほど危険なことはありません。(福島のような)こんな事故が何度も起こったら、とてもではないけれど日本の経済は先行きがないですよね。

 たとえばイギリスでは、2020年までに原発32基分の(発電ができる)洋上風力発電所をつくるというんですよ。全エネルギーの3分の1はこれで賄おうというんです。これはものすごい産業になりますよね。

 渡辺 共産党がおっしゃっているのは新たな産業とか雇用の創出につながるということですよね。

 志位 つながりますね。これまで原発をどんどんつくってきましたが、もうかっているのはどこかといえば、原発メーカーとゼネコンなどです。そういう巨大企業はもうかるけれども、地元の中小企業のみなさんや、働いている人にとっては、本当に地元に根づいた仕事にはなりません。しかし、再生可能エネルギーでしたら、小規模のものもたくさんつくれます。地産地消のエネルギーにもなり、地元の仕事おこしにもつながります。

人間らしい生活、安心して暮らせる社会を

 渡辺 一方で節電もしなければいけないという考え方が(共産党提言の)ベースにあるんですね。

 志位 あります。エネルギー使い放題の社会でいいのか、「大量生産、大量消費、大量廃棄」、こういうやり方でいいのか。24時間こうこうと明かりがついている、そういう社会でいいのか。やはりここは低エネルギー社会への移行が必要だということです。ただこれは「がまんの社会」ではなくて、たとえば労働時間が日本では長すぎますよね。年間でドイツやフランスより500時間も長いんですよ。これをヨーロッパ並みに短くして、一家だんらんもできるようにして、早寝早起きもできて(笑い)、夜も24時間働くような生活はやめるということです。人間らしい労働と生活をつくることは、低エネルギー社会に移行するうえでも大切だと思います。

 渡辺 太陽電池パネルとか洋上風力とか。ただこれにはコストとか、地熱も含めて時間の問題がいわれますよね。5年、10年で一定のレベルまでできるのでしょうか。

 志位 いま、コストがぐーっと下がっています。たとえば風力なんかも、だいたい2020年くらいまでで火力と同じくらいのコストになるといわれています。いま、どんどんと技術が進歩してきていますから。コストも下がってくる。そして、原子力の方はコストが低い低いというけれども、こんな事故を起こしたらもう大変な問題でしょう。

 石田 そうですね。

 渡辺 総合的に考えると、共産党の考え方は、エネルギーを自然エネルギー、再生可能エネルギーにもっていく、それから節電をする、人間らしい生活を回復する。

 志位 そうですね。やっぱり私たちが目指しているのは、人間らしく生活できる、安心して生活できる、そういう社会をつくりたいということですね。

 渡辺 原発だけではなくて、安全でない部分はありますよね。

 志位 それはたくさんあります。

 渡辺 永田町だってこのままでいいのかと僕なんかは思うけれど。政治家の方はもう少し、被災地の方々のことをお考えになって国会運営をしていただきたいし、もっといろいろやってもらうことが多いですよね。

 志位 そうですね。私も被災地に何度か伺っていますけれども、今度の震災というのは第1次産業の打撃が大きいでしょう。ですから漁業にしても農業にしても、早く再生への光がほしい。船を確保する、漁業と加工業と流通業を一体的に再生させる。そして漁協の皆さんががんばってきたわけですから、その努力を応援する。国が乗り出していっての大規模な一大プロジェクトがいりますよね。農業もそうですね。

 渡辺 ぜひお願いしたいですよね。

 石田 今日は貴重なお話をありがとうございました。

志位さんの考え正しい

 番組の最後に、志位氏から話を聞いた2人はこんなやりとりを。

 石田 いかがでしたか。

 渡辺 志位さんのお考えになっていることはやっぱり正しいですよね。もう一度、われわれの生活を考え直す、豊かな生活を取り戻していきたいという考え方は正しいと思います。





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