2011年6月25日(土)「しんぶん赤旗」

B型肝炎和解合意

ようやく ここまで

原告 「子どもの被害は続く」


 B型肝炎訴訟の和解協議で原告と被告の国とが和解に向けての基本合意書を確認しました。28日午後には細川律夫厚生労働相と原告が調印。原告は、菅首相と直接面談して謝罪を求めます。


 これまでも薬害事件や公害問題などで加害者実効のともなわない形だけの謝罪が繰り返されてきました。菅首相の「謝罪」の中身が問われています。

 原告の求めている菅首相への謝罪は(1)全ての国民に向けた説明と心からのおわび(2)二度と繰り返さない決意に立った償いと恒久対策(3)真相究明―の三つに集約されます。

 「ようやく頂上にたどり着いた」という新潟訴訟原告団代表の金子剛さん(64)。「菅首相は国民全体に謝罪してほしい。集団予防接種でB型肝炎に感染する危険性は全ての国民にあった。700人以上の原告になった被害者だけの問題ではないのです」といいます。

 大阪訴訟原告団共同代表の小池真紀子さん(59)は、予防接種で感染し、長女と長男の2人の子どもに母子感染させてしまいました。「私が死んでしまったあとも子どもたちの被害は続きます。2次感染の悲劇を生んだ責任についても子どもたちに謝罪してほしい」

 東京訴訟原告の田中義信さん(52)は「二度と起こさない公衆衛生行政の改革と全ての肝炎患者を対象にした恒久対策が必要だ」と述べます。「国は賠償金が多額になることを口実にして増税を言いだしています。きちっと謝罪し説明する。なぜ危険性を知りながら長年放置され、2006年6月に最高裁判決で国の責任が確定されても救済されなかったのか真相究明してほしい」と語っています。

 菅首相には、何よりも被害者の心に届く謝罪の言葉が求められます。


より良い解決 国会で実現を

原告団・弁護団が声明

 全国B型肝炎訴訟原告団・弁護団は24日、第23回和解協議について声明を出しました。

 声明は、提訴後16人の原告がなくなり、多くの感染被害者が提訴もできずに亡くなっていることを指摘して「国の謝罪を受けないままに亡くなった被害者の無念にも十分思いをいたして、総理大臣及び厚労大臣には、心からの謝罪がなされることを期待する」としています。

 裁判長が基本合意はベストのものではないとして「国会その他の場で、より良い解決をいただければと思います」との所感を述べたことを紹介して、立法府が「限界」を乗り越えた救済内容を実現すべきだと主張しています。


重い扉開くが通過点 大阪原告団

 B型肝炎訴訟大阪原告団は24日、共同代表の小池真紀子さんと久永信行さんらが会見しました。

 小池さんは「菅首相には、すべての被害者、家族の人生を変えてしまった被害の大きさを考えて、国の加害責任を真剣に謝罪してほしい。すべての肝炎患者が安心して生活していけることが本当の解決です」といいます。

 久永さんは「基本合意の重い扉が開いたが、まだ通過点でしかありません」と今後の個別認定で肝炎患者の救済をかちとると表明。国民に集団予防接種を強制した国の責任での解決を求めました。

 弁護団の西原和彦弁護士は「これからは個別救済と一般恒久対策の新しいステージ。札幌地裁の裁判長が政治解決で基本合意以上の内容の立法を期待しており、国はそれを受け止め、よりよい立法を行うよう望みます」と話しました。


原告以外にも救済の道

提訴が必要に

 厚生労働省の推計によると救済対象者は約40万人と見られています。基本合意書が調印されれば727人の原告以外にも救済の道が開かれます。

 そのためには提訴していない被害者や遺族が訴えを起こさなければなりません。提訴には、原則、母子手帳や自治体の予防接種台帳で予防接種を受けたことを証明する必要があります。こうした資料は保存されていない場合が多く、当時日本に住んでいたことを証明する戸籍の附表や、接種した時期や場所についての本人、親族らの陳述書でも可能です。

 対象者は、国が法律で予防接種を強制した1948年から注射器の使いまわしを禁止した88年の間に、満6歳以下で予防接種をうけてB型肝炎ウイルスに感染した被害者と、その母親から二次感染した子どもです。





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