2011年6月23日(木)「しんぶん赤旗」

福島第1原発の現場 労働者使い捨て

下請けに危険知らせず 東電の責任回避


 通常の原子炉内の冷却水よりも約1万倍も強い放射能に汚染された東電福島第1原発3号機タービン建屋地下のたまり水で作業員が被ばくした事故から24日で3カ月になります。被ばく当時に何があったのか―。関係者の取材で、「現場」を再現すると原発を支える「使い捨て労働」のずさんで危険な実態が見えてきました。 (山本眞直)


 被ばく事故は、原子炉に隣接するタービン建屋地下で、電源ケーブルの敷設中に起きました。被ばくしたのは東電が大株主の関電工社員2人(いずれも現場監督)と2次下請け会社の作業員1人とされていました。2人の被ばくは180ミリシーベルトに達しています。

実は6人

 東電は当初、「被ばくは3人」を繰り返していました。本紙の再三の取材に、▽作業は3人一組で2チーム▽ケーブルは(1)外径16ミリ・長さ80メートルで重さ30キロ(2)外径20ミリ・長さ70メートルで重さ60キロ―の2本を敷設したこと、この中で作業員6人全員の被ばくを認めました。

 3月24日、「生ぬるいな」。地下のたまり水に足を踏み入れた作業員が誰ともなくつぶやきました。東電は「作業をさまたげるものではない」としますが、関係者は「本来なら作業せずに直ちに撤退すべきだった」と憤ります。

 「(放射能の)線量計の警報音を作業員は誤作動と思った」と当時、東電は説明してきました。これに対し関係者は「全員の線量計が同時に誤作動することはありえない。建屋内にはビーという警報音が鳴り響いていたはず」と反発します。

 東電は事故直後に、「線量計は正常に作動していた」と訂正しながらも、自らの責任を回避するかのようにこう予防線をはります。

 「警報音はすぐになりやんだ」「作業員は現場から免震重要棟に戻り、高線量被ばくを初めて認識した」

 現場への責任のおしつけです。問われるべきは東電の責任です。

 内規は、作業前の放射線量測定を指示しています。それをせずに水素爆発した原子炉建屋につながるタービン建屋の作業に突入させました。しかも東電は1号機の同建屋地下で高濃度のたまり水の検出を確認、地下作業の危険性を把握していながら、この情報を3号機の作業チームには伝えていませんでした。

 免震棟で作業チームを目撃した関係者はこう反論します。「タービン建屋から免震棟に戻るとき、みんな靴をビニール袋でカバーしていた。移動する車内や免震棟への被ばくの拡大を防ぐためだ」

把握せず

 被ばくした作業チームのその後の健康管理について東電は「高線量被ばくの2人は健康への影響のないことが確認されている。あとの4人は線量が低いこともあり、特に把握していない」。

 関電工社員と同時に被ばくしたのは「2次下請けのK電設(本社・東京都)だよ」と話すのは1次下請けの会社幹部。同電設に取材を申し込むと「話すことはない」と取材を拒否しました。

 東電は、残る3人について、3次下請けの作業員1人もたまり水で作業し、56・7ミリシーベルトを被ばくしたこと、たまり水につからなかった残る2人の被ばく(10ミリシーベルトと16ミリシーベルト)も認めました。

 復旧作業で、内部被ばくの不安をもつ下請け作業員が訴えます。

 「復旧作業の現場はどこも汚染され生きた心地がしない。高濃度に汚染された現場を確認もせずに作業を強要した東電、関電工、K電設の安全管理義務違反、業務上過失傷害は免れないという指摘がある。被ばく事故に口をつぐむのは責任逃れと下請け作業員の使い捨て体質そのものだ」





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