2011年6月20日(月)「しんぶん赤旗」

仙台・複合娯楽施設「コロナ」

大震災口実 解雇許さない

バイト107人 労組結成


 仙台市内の複合娯楽施設で働くアルバイト店員107人が宮城一般労働組合(全労連・全国一般加盟)に加入し、東日本大震災を口実にした解雇とたたかっています。 (田代正則)


“被災者の生活を何だと”

 組合員たちが働いていたのは、コロナ(本社・愛知県小牧市)が経営するパチンコや映画館、ボウリング場、カラオケ、温泉、ホテルまで併設した複合施設「コロナワールド」の2店舗です。

 正社員は30人程度で、アルバイト568人が主力です。アルバイトとはいえ、ほとんどがフルタイムで働き、この仕事で生計を立てています。

 店は3月11日の大地震で被害を受け、営業を休止しています。アルバイトには、上司から「解散だ」「自宅待機だ」などバラバラな指示があり、解雇への不安が広がりました。そんなとき突然「会社と社長のポケットマネーを合わせて1人1万円ずつ支払われる」と連絡が入りました。

 「1万円の手切れ金で解雇するつもりか。ばかにしている」とアルバイトたちに怒りが芽生えました。3月23日、6人が宮城県労連の労働相談に行き、その場で「労働組合を結成しよう」と決意。支部長は26歳の女性で、役員は全員20〜30代です。

 ケータイやツイッターなどのつながりで声をかけ合い、瞬く間に107人が集まりました。

 労組を結成した当日、会社に団体交渉を申し入れました。会社は「解雇とは言っていない。方針が決まっていない。待ってくれ」と1カ月以上、逃げ回りました。

賃金・手当払わず

 宮城一般の試算では、解雇するとしても最低限支払うべき解雇予告手当は107人分2200万円、有給休暇取得分5900万円の合計8100万円となります。

 一方、会社は労働基準監督署に「解雇予告除外認定」を申請。4月27日、認定を受けたとして労組に対し3月11日以後の賃金や解雇予告手当を支払う必要はない、といいだしました。

 労働基準法20条で解雇予告がなくても違法と言えないと認められるのは、天災事変など「やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」です。コロナは「方針が決まっていない」ので休業しているだけで、解雇は有効になりません。

 5月8日、初の団体交渉が実現。出席可能な65人の労働者が参加し、怒りをぶつけました。

 「会社は私たちを捨てて逃げていった。被災者の生活を何だと思っているのか」

 「9年間1回も有給休暇をとることなく働いた。小さい子どもを家に置き、閉店の夜10時まで、ときには連続20日間も働いた。6年前に『正社員にする』と言われたが、口先だけだった」

 会社側は「有休の買い取りも休業補償もできない」と言いながら、「早く復興させたい。事業所の再開は秋ごろを考えている」と矛盾した発言をしました。

 労組は解雇予告除外認定の不合理さを厚労省にも訴えました。

“不適切”と副大臣

 日本共産党の高橋ちづ子衆院議員は5月11日、国会でコロナの解雇をとりあげ、「(労基署は)労働者の意見も聞かず、現地調査も行っていない。(解雇予告除外認定の)決定は問題がある」とただしました。

 小宮山洋子厚労副大臣は「私も適切ではないと思います」「悪用があってはいけない。フォローしたい」と答弁。労基署はコロナを呼び話を聞きました。会社側は、パチンコとホテルを再開するので面接をしたい、といいはじめています。

雇用守る力あるのに

横行する予告手当不払い解雇

「天災」免除 安易な認定

 仙台市の2店舗で568人のアルバイトを解雇しようとしたコロナの場合、営業を休止しているだけなのに、労基署は現場を直接確認せず、労働者の意見も聞かず、解雇予告除外認定を出しました。

 コロナはパチンコやホテルの複合娯楽施設を10県19店舗展開し、2008年度は総売り上げ1500億円。雇用を守る体力はあります。

相次ぐ相談

 宮城一般労働組合の遠藤秋雄特別執行委員(全労連・全国一般書記長)は、「被災地で、企業に雇用を守る体力が残っているのに『解雇予告除外認定』が出され、労働者から相談が相次いでいる」と指摘します。

 被災者が解雇予告手当などの補償もなく解雇され、窮地に追いやられる事例が増えています。

 宮城一般が相談を受けた事例では、コンビニエンスストアへの物流を請け負っていた仙台空港近くの運送会社が、津波被害を受けたとして、解雇予告除外認定を受け、労働者を解雇しました。

 ところが、その運送会社はすぐに別の施設を借りて事業再開し、1カ月後の4月11日には、元の住所に会社を戻し、新たな従業員の募集まで行っています。

 同県名取市の水産加工会社は、一つの工場は津波で壊滅しましたが、内陸にある別工場は稼働し、企業自体は存続しているのに、解雇予告除外認定を受けています。

“お墨付き”

 遠藤氏は、「解雇予告除外認定は、単なる事実認定にすぎず、解雇を有効にするものではないとされているが、現場では企業が、労働者に何の補償もしなくていい“お墨付き”のように振りかざしている」と強調しています。

 震災以後、解雇予告除外認定の申請数は17日までに、岩手県で113件、宮城県で293件、福島県で57件となっています。労基署が実情をよく見て認定作業を行えるよう、労働行政の体制強化などに国が責任を持つことが欠かせません。

 宮城一般は厚労省要請などで「安易な認定をすべきではない。間違った認定には是正措置を講じるべきだ」と訴えています。


解雇予告除外認定とは

 企業が労働者を解雇する場合、最低でも、30日前に解雇予告するか、30日分以上の賃金を支払わなければなりません。

 ただし、重い犯罪をおかしたなど労働者側に責任がある場合や、「天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合」は、免除されます。(労働基準法20条)

 その場合、企業は労働基準監督署から、「解雇予告除外認定」を受ける必要があります。労基署は、企業の勝手な判断を許さないため、1988年の通達で、現場を確認し、労働者や労働組合からも意見を聞くことになっています。





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