2011年6月16日(木)「しんぶん赤旗」

介護保険法改定案が成立

日本共産党は反対

参院本会議


 参院本会議で15日、介護保険法改定案が賛成多数で可決、成立しました。日本共産党、社民党は反対しました。

 日本共産党は、「要支援」と認定された高齢者へのサービスを、市町村の判断で安上がりなサービスに置き換えることを可能にすることや、医療専門職が行うべき医療的ケアを介護職員に押しつけるなどの問題点があることから反対しました。

わずかの審議時間で強行

改定介護保険法 問題点こんなに

 衆院で10時間弱。参院で8時間弱。

 民主、自民、公明、みんなの各党はわずかの審議で改定介護保険法を成立させました。

 医療・介護関係団体の運動や日本共産党国会議員団の追及で改定法の問題点が明らかになりましたが、その危険性は介護を必要とする多くの当事者に知られていません。

サービスの質低下する恐れ

 一つは、「要支援」と認定された高齢者への介護のあり方です。

 新設の「介護予防・日常生活支援総合事業」(総合事業)を導入した市町村は、要支援者へのサービスを従来通りの保険給付とするか、市町村任せの総合事業とするかを決められるようになります。

 保険給付のサービスと異なり、総合事業にはサービスの質を担保する法令上の基準がありません。費用を減らすため、生活援助やデイサービスをボランティアに任せるなどの事態が起きかねません。

 サービスのとりあげが広がる恐れもあります。これまで独自の「ローカルルール」をつくって生活援助や散歩介助をとりあげてきた市町村に対し、国民の運動を受けて、国は法令上の基準を根拠に是正を求めてきました。総合事業では肝心の基準がなくなるため、ローカルルールによるサービスとりあげが横行しかねません。

医療行為を押し付ける

 二つ目は、医療専門職が担うべき医療行為を介護職員に押し付けることです。

 国が看護師不足を放置し、医療が必要な患者を無理に退院させてきたため、施設の介護職員がたんの吸引などを肩代わりせざるをえない現状です。改定法はこの現状を逆手にとり、たんの吸引を法律で追認することを突破口に、介護職員が担う医療行為を厚労省令で拡大していく仕組みです。

 安全性を確保できるのか。事故の責任は誰が負うのか。賃金上の評価もなく研修と業務の負担が重くなれば、離職者がさらに増えないか。現場は多くの不安を抱えています。

介護病床廃止方針を継続

 三つ目は介護療養病床について廃止の方針を継続することです。

 改定法には付帯決議がつきました。▽総合事業の実施にあたっては利用者本人の意思を最大限に尊重する▽医療行為の実施に向けて知識・技術の十分な習得、安全管理体制の整備、定期的な検証を行う▽介護療養病床の廃止について実態調査を行い、必要な見直しを検討する―などです。

 共産党議員団や関係団体が批判した問題点を一定認めざるをえなかったのです。

 改定法の施行は2012年4月。14日に国会内で開かれた抗議集会では、要支援者切り捨ての総合事業を市町村に導入させないなどのたたかいを広げ、改悪部分を運用段階で「骨抜きにしよう」(全日本民主医療機関連合会の山田智副会長)との決意が語られました。今後の世論と運動が重要です。 (杉本恒如)





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