2011年6月16日(木)「しんぶん赤旗」

原発撤退 欧州で勢い

維持・堅持の国でも世論に変化、反対高まる


 福島第1原発の事故による被害が拡大するなか、欧州では政府が原発維持の方針を表明している国でも、原発に反対する世論が高まっています。イタリアの原発復活計画の是非を問う国民投票で圧倒的多数の国民が復活に反対の意思を示したことは、欧州の脱原発の動きに弾みをつけるものになりました。 (片岡正明)


 イタリアの国民投票では、反対票は95%近くになり、ベルルスコーニ首相も「原発にさよならを言わなければならない」と語り、脱原発政策の維持が決まりました。

 ドイツではメルケル首相が「日本のような技術力が高い国でも原子力のリスクはコントロール不可能だ」として、政治的決断として原発から撤退すると強調し、2022年までの原発撤退計画と関連法案を議会に提出しました。スイスは原発のリスクや解体費用などを考慮すると自然エネルギーの方が経済的にも勝るとして、34年までに原発を廃止する方向に転じました。

影響与え合う

 05年に脱原発から原発維持に政策を転じたオランダでも、福島原発事故の直後、世論調査で回答者の3分の2が同じような事故が起きる可能性があると危惧を表明。4月16日には野党の労働党や緑の党が中心になって、大規模な集会を開きました。オランダの動きは、昨年、従来の脱原発方針を転換する法案を小差で可決したスウェーデンにも影響を与えるとみられます。

 チェルノブイリ事故で直接の放射能被害を受けた北欧などでは、もともと強い脱原発志向があります。25年までの原発撤退政策を堅持しているベルギーや、完成した原発を一度も運転しないままチェルノブイリ事故直後に閉鎖したオーストリアなどは、欧州の原発規制強化を求め、隣国などにも旧式原発の廃止を訴えています。

 一方、米国に次ぐ世界第2の原発大国であるフランスは、原発産業は国の重要な産業になっているとして、原発を推進する姿勢を崩していません。しかし、同国でも今月5日に行われた世論調査では、「原発を直ちに廃止すべきだ」の回答が15%、「25年から30年にかけ廃止すべきだ」の回答が62%と約8割の人が脱原発政策を求めています。

国民の声聞く

 電力需要の急増が見込まれる東欧では、今のところ、原発維持の方針に変化はありません。しかし、東欧の中で大きな影響力を持つといわれるポーランドでは、連立政権与党の農民党が原発政策の再点検を主張し、原発再開の是非を問う国民投票の実施を求めています。同党の報道官は、ロイター通信に対し「日本での最近の出来事やドイツの決断を前に、国民全体に意見を聞くべきだと考える」と語りました。





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