2011年6月15日(水)「しんぶん赤旗」

東電支援法案を閣議決定

存続前提に公的資金投入


 政府は14日、東京電力福島原子力発電所の事故に伴う賠償金の支払いを支援するための法案を閣議決定しました。法案は、東京電力の存続を前提とし、新たな組織「原子力損害賠償支援機構」を設置し、公的資金を投入することが柱です。

 原発を持つ全国の電力会社が、機構に負担金を拠出して、損害賠償に備えるための積み立てを行います。また、政府も国債を交付することで、公的資金により援助します。

 機構は負担金と公的資金により、東京電力に対して資本増強や融資などを行い、賠償や設備投資に必要な資金を援助します。その際、機構に設置する「運営委員会」で議決するとしています。運営委員会は原子力や経済の専門家などで構成されます。

 援助を受けた東京電力は、機構とともに「特別事業計画」を作成します。特別事業計画には損害賠償額の見通しなどのほか、株主や貸し手の金融機関への資金協力要請などを盛り込みます。

 東京電力は機構に対し、特別負担金を支払うことで返済します。また機構は、負担金などにより国庫納付を行うことで、政府が援助した公的資金を返済します。

 ただ、東京電力が負担金によって電気の安定供給などに支障をきたす場合には、政府は機構を通じて必要な資金を交付できるとされています。


解説

国の指導性を明確に

 14日に閣議決定された原子力損害賠償支援機構法案は、東京電力支援です。さらに「将来にわたって原子力損害賠償の支払いなどに対応できる支援組織」をつくるもので、今後も原発依存体制を続けることを想定しています。

 賠償支援の原資は、原子力発電所を持つ電力会社の負担金と公的資金です。負担金については、「事業コストから支払いを行う」と明記されており、電気料金に上乗せされる可能性があります。

 これまで東京電力に融資し、原発を推進してきた貸し手金融機関や、経営に責任のある大株主などについては、「協力の要請」を行うだけです。金融機関側は、東電に対する債権放棄には応じられないとしています。これら金融機関に対して、同法案は強制力で責任を果たさせるものになっていません。

 東京電力は大震災前の2010年3月の時点で、日本政策投資銀行から3500億円、日本生命から1400億円、三井住友銀行から1200億円もの長期借入を行っています。また、東京電力の大株主には第一生命やみずほコーポレート銀行などもいます。これら貸し手や株主への責任が問われなければなりません。また、原発メーカーも責任が問われるべきです。

 一方、目的の第一に掲げられた「被害者への迅速かつ適切な損害賠償」は、遅々として進んでいません。ようやく避難住民への一時金支給がほぼ完了し、農林漁業者や中小業者の営業損害に対して一部が支給されたにすぎません。

 「風評被害」を含めた損害額を全面的に、迅速に賠償させなければなりません。しかし、政府は「円滑な賠償のために適切な役割を果たす」としているだけです。東電に全面賠償を行わせるために、国の指導性の発揮を明確にするべきです。 (清水渡)





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