2011年6月8日(水)「しんぶん赤旗」

被災地ハローワーク調査から

大企業の違法解雇規制を

中小企業再建へ支援急げ


 東日本大震災の岩手、宮城、福島被災3県で本紙が実施したハローワーク調査(5月26〜28日)で、大企業や派遣会社による違法な解雇・雇い止めがまん延していることが明らかになりました。地元の雇用を守ろうと必死に頑張る中小企業を支援するとともに、大企業や派遣会社の違法行為を規制する措置を急いでとることが求められます。

 宮城県のハローワーク石巻に来ていた郊外大型スーパーの正社員だったという男性(30)は、「津波の被害はなかったので、すぐに営業再開している。しかし、4月に業績悪化を理由に解雇された」と話します。

 仙台市在住の女性(23)は、大手ケーキ店チェーンの店舗でケーキ製造や販売をしていました。震災直後、解雇となりましたが、5月あたまに「営業を再開するので戻ってきてほしい」と声がかかりました。

 「ほかに仕事が見つからないので、再雇用に応じます。でも、こんなに早く営業再開できるなら、なぜ解雇したのか。会社に不信感があります」と話しました。

雇調金活用して

 被災地であっても、「整理解雇の4要件」((1)解雇をしなければ企業が維持・存続できないほどの必要性がある(2)労働時間短縮、一時帰休など解雇回避の努力がつくされた(3)解雇対象者の人選が客観的で合理的である(4)労働者や労働組合に納得を得る努力がつくされた)は適用されます。

 震災で事業が縮小した事業所には、「雇用調整助成金(雇調金)」制度があり、労働者を一時的に休業させた場合に、賃金等の一部を助成する特例ができました。支給要件も緩和されました。雇調金を活用して雇用を守ることが求められます。しかし、そのような努力をする前に簡単に解雇されているのが実態です。

 非正規雇用労働者に対する無法な首切りも広がっています。

 連結売上高が700億円という電子部品メーカーの石巻工場では、3カ月契約を5年間も更新して働いた男性(35)が3月で「雇い止め」となりました。「390人の従業員のうち、350人が首を切られた」と言います。

 有期雇用でも契約更新を繰り返せば、正社員同様に扱わなければなりません。

 石巻市内のレンズ加工工場に派遣されていた男性(30)は、震災後、派遣会社から「仕事がなくなったので、終わり」といわれ、賃金も3月11日分までしか出ていません。

 仙台市の家具工場に派遣されていた女性(31)は、「震災後1週間自宅待機になったあと、派遣会社から解雇され補償がない」と話しました。

 派遣契約途中に、派遣先の仕事がなくなった場合、派遣会社は別の派遣先を紹介しなければなりません。仕事がなくても、労働者に賃金を支払う必要があります。

 契約期間の途中で有期雇用の労働者を「解雇」することは、労働契約法17条によって、正社員を解雇する場合の「4要件」以上に厳しい制限があります。派遣会社でも雇調金は適用されます。どうしても解雇する場合は、最低でも30日分の予告手当を支払わなくてはなりません。

中小の努力限界

 雇用を守ろうと必死で頑張る地元中小企業も復興のめどが立たずに限界に近づいています。

 宮城県塩釜市の男性(36)は、「5月26日付で解雇通告を受けた」と打ち明けます。働いていた食品加工工場は閉鎖されたまま。会社は労働者を自宅待機として、賃金の5割を休業手当として支払っていましたが耐え切れなくなりました。

 労働者から「会社再建のめどが立たないのに、雇調金を使ってほしいといいにくい」という声があがっています。

 雇調金や雇用保険による労働者の賃金への助成とともに、地域経済を守るため中小企業が事業を一刻も早く再建できるよう支援策が急がれています。





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