2011年6月7日(火)「しんぶん赤旗」

主張

民自「大連立」

被災者と国民を裏切るものだ


 民主党と自民党の間で菅直人首相の辞任を前提に、東日本大震災への対応や社会保障と税の「一体改革」のための「大連立」の動きが急浮上しています。民主党の岡田克也幹事長が「期限付きの大連立を」といえば、自民党の石原伸晃幹事長も震災対策で協力し、外交・安全保障、社会保障、震災復興などで合意すれば、選挙後、本格的な体制をと主張しています。菅首相も、辞任の前に2次補正予算の編成や特例公債発行法案の成立、「一体改革」などに道筋をつけたいと言い出しています。

「翼賛国会」再現の恐れ

 東日本大震災は発生から3カ月近くになるのに、いまだに10万人の被災者が避難生活を続け、「災害関連死」など二次被害の発生さえ深刻に懸念される状態です。震災にともなう東京電力福島第1原子力発電所の重大な事故も収束のめどが立たず、飛散した放射性物質による被ばくの恐れやいつまで続くか分からない避難生活の長期化が大問題になっています。

 一刻の猶予も許されない大震災の被災者救援や原発事故の収束に党派の違いを超えて力を合わせるのは当然です。「大連立」でなくても各党の協力はできます。緊急時だからといって、民主党政権が進める上からの「復興」計画の押し付けや自民党政権いらい進めてきた原発推進で「大連立」し、協力するのはまったく筋が違います。

 いま国民が求めているのは、緊急の被災者支援などで力を合わせるとともに、大震災からの復興や原発に頼らない今後のエネルギー政策について議論をつくすことです。漁協関係者などの反対を無視して漁業の株式会社化を進めるとか、「復興」財源に消費税を増税するといった、上からの「復興」計画の押し付けは、被災者の願いに反するものです。原発を「国策」として推進したエネルギー政策は、根本から見直しが迫られています。緊急事態だからというだけで民・自が「大連立」し、まともな説明もなく押し付けるのは、被災者・国民の願いに背くものです。

 しかも、震災対応にとどまらず、被災者を含めすべての国民に福祉の切り捨てと消費税の増税を押し付ける社会保障と税の「一体改革」のために民主と自民が「大連立」するなどというのは、緊急事態に便乗した悪政のごり押しです。

 今後の社会保障や財政をどうするかはそれこそ時間をかけて国民と国会が議論すべきことで、民主と自民だけで決めればいいものではありません。民主と自民の議席をあわせれば、衆院でも参院でも圧倒的多数を占めます。民・自の「大連立」は国会審議を形骸化し、国民の反対を無視しても犠牲を押し付けることになります。それこそ、侵略戦争を推進した戦前の「翼賛議会」を再現するものです。

党利党略のきわみ

 だいたい直前までは自公が提出した菅内閣不信任案をめぐって応酬し民主党内の造反まででていたのに、菅首相が辞めそうだとなれば突然「大連立」に動くなどというのは、党利党略のきわみです。

 民主党は、自民党政権を批判して政権に就きました。にもかかわらず、菅政権のもとでもたびたび消費税増税などで「大連立」に動いてきました。菅首相の辞任を機にした「大連立」の動きも、民主党では政治の中身が変わらないことを浮き彫りにするだけです。





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