2011年6月4日(土)「しんぶん赤旗」

主張

社会保障「改革」案

国民へのしわよせが目に余る


 社会保障と税の「一体改革」に関する「集中検討会議」(議長・菅直人首相)が2日、社会保障「改革」案をとりまとめました。

 社会保障の「重点化・効率化」を強調し、医療・介護や生活保護など各分野で給付削減と負担増を盛り込み、国民にしわよせする方針を打ち出しています。

 社会保障の「安定財源」を名目に2015年度までに消費税を10%に引き上げると明記しました。将来は社会保障費の全体を消費税でまかなうとしています。20%を超える水準への消費税大増税です。

がまんと口実の3本柱

 国民にしわよせする「改革」案の考え方は、たたき台となった厚労省案によく示されています。厚労省案は社会保障を単なる国民の「助け合い」であるかのようにのべて、国の責任を投げ捨てる立場を鮮明にしました。福祉と社会保障の増進を国に義務付けた憲法25条を踏みにじる議論です。

 首相が検討会議に指示した「支え合い3本柱」も、国民の「支え合い」の美名で国の責任を隠しています。3本柱の中身は給付削減、自己負担増、高齢者負担増をがまんするよう国民に迫る“がまんの3本柱”となっています。

 厚労省案は国際競争が激しいから大企業が負担を続けるのは容易ではないとして、社会保障に対する大企業の責任も免じました。

 国の責任を放棄し大企業の責任も問わず、もっぱら国民に負担を求める―。「改革」案の基本姿勢は、社会保障を抑制し庶民に負担増を押し付ける歴代自民党政権の路線と、大もとから「一体化」しているというほかありません。

 首相は「支え合い3本柱」に先立って子育て支援、非正規労働者への社会保険適用、自己負担の「合算上限制度」の導入の「安心3本柱」を指示しました。それぞれ「改革」案に入っています。

 非正規労働者の社会保険の適用は、とうの昔に解決しておくべき問題です。子育て支援で政権が検討しているのは公的責任を投げ捨てて株式会社の参入など利益優先の仕組みを持ち込むことです。

 医療費などの負担の合計に上限を設ける「合算上限制度」は社会保障と税の「共通番号制度」の導入を前提としています。「共通番号制度」は個人の所得を正確につかむことを建前としていますが、この制度では高額所得者の海外取引などは把握できません。すでに導入している米国では番号が流出して個人情報が垂れ流され、番号を悪用した「なりすまし」犯罪が大きな社会問題になっています。

 これでは安心できません。「安心3本柱」というより、国民に負担増を押し付ける“口実3本柱”というべきです。

執念に目がくらんで

 「集中検討会議」は消費税の逆進性も景気悪化の懸念も否定しています。しかし、消費税の重さは庶民が毎日実感しています。消費税は社会保障の所得再分配の効果を台無しにする福祉破壊税です。消費税増税は国民の可処分所得を奪います。5%の増税で可処分所得が12兆円も減るのに景気後退を招かないと言い張ることは、消費税増税の執念に目がくらんでいるとしか思えません。

 消費税は庶民に重く、景気も壊します。社会保障の抑制路線を強めながら消費税を増税することは、何重にも道理がありません。





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