2011年6月2日(木)「しんぶん赤旗」

福島原発

津波災害を過小評価

IAEA調査団 規制機関独立性求める


 東京電力福島第1原発事故で、来日中の国際原子力機関(IAEA)の調査団は1日、「日本の原発が津波災害を過小評価していた」などとする事故報告書の要旨をまとめ、政府に提出しました。

 報告書は、福島第1原発が地震直後に運転を停止できたものの、14メートルを超える津波でほぼ全ての非常用電源を失ったことが事故の要因と認定。

 一方で、日本の原発が津波災害を過小評価してきたと指摘。原発を運転する電力会社などが全ての自然災害のリスクについて、適切に防御策を講じるべきだとしました。

 さらに、原子力規制行政のあり方にも言及。経済産業省原子力安全・保安院と原子力安全委員会による規制についても、各機関の独立性担保と役割の明確化を進めるべきだと提言しました。

 各国の原子力専門家18人からなる調査団は5月24日から調査を開始。東日本大震災で津波被害を受けた日本原電東海第2原発(茨城県東海村)、東電福島第2原発を視察した後、同27日に福島第1原発を訪問。吉田昌郎所長から事故の状況などについて聞き取りを行い、発電所内の状況を見て回りました。

 調査団は帰国後に報告書を完成させ、今月20日からウィーンで開かれるIAEA閣僚級会合に提出。原発の安全性向上策が議論されます。

解説

原子力行政の誤り明らかに

 国際原子力機関(IAEA)の報告書要旨は、日本の原子力政策がいかに間違ったものであるかを浮き彫りにしています。

 日本の原発はすべて海に面したところに立地しています。海底で巨大な地震が発生すれば、津波によってすべての電源を失って原子炉が冷却できなくなり、取り返しのつかない事態に至る危険性があることは、早くから多くの人たちが指摘してきました。

 住民団体や日本共産党は、再三にわたって、国と電力会社に申し入れを行い、国会で質問し、対策を求めてきました。しかし、国と電力会社は、「現実には起こらない」「多重、多様な電源設備がある」などといって、この問題に目をつむってきました。その結果、福島第1原発は、三つの原子炉が同時に炉心溶融(メルトダウン)を起こし、大量の放射能を放出するという世界で例をみない深刻な状況に陥っています。

 日本の原子力規制行政が、推進機関から独立していないという指摘についても、住民団体と日本共産党は問題点を明らかにし、是正を求めてきました。

 一方、報告書要旨は、事故後ベストの対応が取られたと評価していますが、本当にそうでしょうか。日本では、過酷事故に対する備えがありませんでした。そのために、国も電力会社も、危機にあたってどうすべきか明確になっておらず、打つ手がことごとく後手にまわって最悪の結果を招いたというのが実態です。

 20日に提出される本報告が、日本の原子力行政の抜本的見直しに役立つ内容としてまとめられることが求められています。(間宮利夫)





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