2011年5月23日(月)「しんぶん赤旗」

オバマ氏 中東演説

“パレスチナ国家承認の動きけん制”

アラブ 冷めた目


 【カイロ=伴安弘】オバマ米大統領が19日に行った「アラブの春」と中東和平に関する演説をアラブ諸国は冷めた目で受け止めています。


 中東和平での発言については、パレスチナ自治政府のアッバス議長は、昨年、中断した和平交渉を再開させようとする努力として一応は歓迎しました。

 しかし、エジプトのニュース・ウェブサイト「エジプト・クロニカル」はオバマ氏が1967年の第3次中東戦争以前の境界をイスラエル・パレスチナ国境とすると提案したことについて、「これは新しいものとは考えられない。当然の事実なのだから」と批判しました。

 米当局者は同提案をパレスチナ側が9月の国連での独立国家承認を求める動きに出ないように説得するためだと語っています。

 しかし、パレスチナ解放機構(PLO)のアリカット和平交渉責任者は、イスラエルのネタニヤフ首相が「67年国境」案を拒否したことを受け、「67年のラインを幻想だとする人間と交渉はできない」と明言し、国連総会だけでなく安保理でもパレスチナ国家の承認を求める意向を明らかにしました。

 オバマ提案には少なくない問題があることも指摘されています。一つは、「相互の合意に基づく土地交換」です。中東の衛星テレビ局アルジャジーラの論評は「イスラエルはすでに分離壁の建設で西岸の土地の10%を自国領に組み込んでいる」とし、「イスラエルは土地交換で入植地とヨルダン渓谷地域を得ると主張しており、パレスチナに残されるのは西岸の土地の60%以下になる」としています。

 また、「67年国境」を実施するのであれば、イスラエルの東エルサレムからの撤退が自明であるにもかかわらず、オバマ氏は「エルサレムの将来」を「67年国境」とは切り離し、これから解決すべき問題としています。アルジャジーラの論評は「これは彼(オバマ氏)が(東エルサレムをめぐる)状況をよく知らないのか、あからさまな悪意の表れのどちらかだ」と述べています。

 オバマ氏はまた、イスラム武装抵抗組織ハマスとファタハとの和解を問題にしていますが、パレスチナ側は「和解はパレスチナの内部問題だ」と反論しています。

 一方、オバマ演説の中東民主化の部分については、アラブ首長国連邦(UAE)紙ナショナル21日付は、演説への反応は「支持」よりも「懐疑」が勝っていると指摘。オバマ氏が「暴力的抑圧に反対し、発言の自由、集会や信教の自由を含む普遍的な権利を支持する」と表明はしたが、「多くのアラブ人は『独裁者は倒れる』という彼の言葉の後に具体的な行動が続くのかどうかを見守ると言っている」と述べています。





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