2011年5月22日(日)「しんぶん赤旗」

原発再稼働に甘い菅首相

「安全対策は適切」と中部電に同調


 静岡県御前崎の浜岡原子力発電所の「稼働停止」(9日)から約1週間―。菅直人首相は18日の会見で、定期検査などで止まっている原子力発電所について「緊急的な安全措置のしっかり講じられたものについては、従来の方針に従って、安全性が確認されれば稼働を認めていく」と語りました。


 首相の発言は、「原発の停止ドミノに陥るのではないか」という、電力業界・産業界の「不安」を考慮してのものです。福島第1原発事故の検証も始めていないのに、何をもって「安全措置がしっかり講じられた」とみるのか、首相の姿勢がきびしく問われます。

反省の弱さ

 原発の危険に対する菅政権の反省の弱さは、浜岡原発の「停止」の経過にもあらわれています。

 中部電力は首相の停止要請(6日)の受け入れに際し、「浜岡原子力発電所運転停止要請に係る確認事項」なる文書を経済産業省に提出(9日)。「浜岡原子力発電所の安全対策は、法令・技術基準等に基づき適切に実施され」ていると強調し、停止は「国民に一層安心頂くためのもの」だとして、そのことを「十分に(国民に)周知していただきたい」と求めました。

 これを受け、海江田万里経済産業相は同日の記者会見で、浜岡発電所は「耐震安全対策はこれまで適切に講じられてきており、技術基準等法令上の安全基準は満たしている」と明言。「苦渋の選択として『一層の安心』のための措置が必要だと判断した」と、中部電力に同調しました。

 M9の規模も予想される東海地震の震源域の真上に立地することから「安全対策」「技術基準」の中身そのものが問われているのです。政府も11日の衆院経済産業委員会で、日本共産党の吉井英勝議員の追及に対し、「震源域の真上に原発が立地している例は世界に存在しない」と認めました。まさに立地基準そのものの即時見直しと、一時停止でなく「廃炉」の決断が必要です。

偏った対策

 浜岡以外の原発の多くも、大規模地震を引き起こす可能性が大きい活断層周辺、地震学界が“危険地域”と指定してきたところに立地しており、安全なところは一つもありません。ところが首相は、浜岡発電所の停止も「浜岡特有の事情を勘案した決断」(6日の会見)だとして、その他の原発の安全性に基本的に問題はないという姿勢を示していました。

 首相が口にする「再稼働」のための「緊急の安全措置」に対しては、「国の対策は津波対策に偏っているのではないか」「安全性の信ぴょう性に疑問がある」との声が地方からあがっています。

 原発から撤退するという戦略的決断とともに、原子力施設に対する安全優先の審査と規制の体制の確立が急務になっています。(中祖寅一)





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