2011年5月14日(土)「しんぶん赤旗」

全面賠償確約と仮払いただちに

東電原発事故 賠償枠組み


 菅直人内閣は13日、東京電力福島原子力発電所事故の賠償枠組みを関係閣僚会合で決定しました。東電と国が責任を持った全面的賠償の確約と仮払いの開始は一刻を争う課題です。もはやこれ以上の遅れは許されません。(清水渡、山田俊英)


 今回の事故で避難生活を余儀なくされている人は9万人以上にのぼります。茨城、栃木両県のJA(農業協同組合中央会)が4月末、当面30億円以上の賠償を請求し、全国漁業協同組合連合会(全漁連)も直接間接を問わずすべての被害を国と東電の責任で補償するよう要求しています。賠償の仮払いをただちに開始するのは当然です。

 しかし、政府の決定を受けて東電が発表した対応は、「5月末ごろまでに」仮払いの開始を目指すといいつつ、被害を受けた事業団体などがまず損害を取りまとめ、その書類を確認してから請求の「一定比率」を払うというものです。

 すでに単位農協や個々の農家などから具体的金額を含めた請求が出ています。業界団体の取りまとめを待つのでなく、東電は仮払いの要求に応じるべきです。

 枠組みは、賠償総額に上限を設けないとしています。東電に勝手な「線引き」を許さず、全面的に賠償させるのは当然です。

 原発災害は今も進行中です。賠償額が今後どこまで膨れ上がるかわかりません。東電が全面賠償を確実に行うため、国が支援の責任を果たすことも必要なことです。

 ただ、今回の枠組みは東電の社債、株式の保護を強調し、同社の大株主を守る仕組みを設けました。負担金の支払いで東電の経営が苦しくなったら、国が東電に直接公的資金を投入できるとの項目を盛り込みました。国民の税金で東電を救う枠組みです。

 賠償総額は今後、兆円の単位にのぼるとみられます。東電が自らの資力で賠償することはもちろん、原発推進の電力事業でこれまで巨額の利益を得てきた大株主の責任も問う必要があります。東電の大株主は第一生命、日本生命、そして三井住友をはじめとする三大銀行などです。大株主保護を前提にした枠組みでは、電気料金の値上げや増税で賠償のつけを国民に回すことになりかねません。

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