2011年5月13日(金)「しんぶん赤旗」

「社会保障改革」厚労省案

「共助」の名で給付削減

“救貧対策”に後退させるもの


 厚生労働省が12日に示した「社会保障改革の方向性と具体策(厚労省案)」は、民主党政権が、旧自公政権の「構造改革」路線に完全に回帰し、政権交代に懸けた国民の願いに完全に背を向けたことを示しています。

 厚労省案は、自己責任や国民の支えあいを意味する「自助」「共助」を強調し、それで対応できない国民に限って対処するのが、生活保護など行政による「公助」だと明記しています。

 同省は、社会保障について「共に助け合う」ことこそが社会保障本来の姿であり、社会保障は「『悲しみや負担の共有』を通じた『幸福の分かち合い』」、「社会保障において国民と政府は相互に支えあう関係」だと解説しています。

 「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」と定めた憲法25条に基づく社会保障への国の責任を否定する暴論です。

 さらに同省は、共助によって「給付の重点化」が可能になると解説します。「給付の重点化」とは給付削減の別名です。共助の強調が給付削減のためであることをあけすけに語っています。

 一方で、厚労省案は「低所得者対策」を強調。「貧困・格差やその再生産を防止・解消」「重層的なセーフティネットを確立」「『働きがいのある人間らしい仕事』を実現する」などの言葉をちりばめています。「構造改革」転換を願う国民を意識せざるを得ないためです。

 しかし、それらも「共助をベース」としたもので、社会保障を“救貧対策”としかねないものです。そのことは、最後のセーフティーネットといわれる生活保護の「適正化」に表れています。

 厚労省は、基礎年金などとの整合性を踏まえ、「自立の助長を損なうことのない水準」に給付額を「適正化」するよう求めます。満額でも月6万6千円にしかならない基礎年金額を基準に、生活保護費を引き下げよというものです。

 生活保護費は現在でも月13万7千円程度にすぎず、むしろ引き上げこそ求められています。「生存権」を保障するという立場に立てば、生活が成り立たない基礎年金額の異常な低水準を放置していることこそ問題であり、基礎年金額を基準に生活保護を引き下げるというのは本末転倒です。

 厚労省は案の解説で、「グローバルな経済競争が激しくなる中、これまでのように企業が社会保障において一定の役割を担うことは容易ではありません」とのべ、社会保障に対する大企業の役割を免除しようとしています。

 日本経団連をはじめ財界は、「集中検討会議」の聞き取りに対し、「自助、共助、公助の位置づけの具体的な明確化」とともに、「グローバル競争激化の下での安易な企業負担増は、企業の成長基盤の破壊につながりかねない」と主張しました(2月19日)。厚労省案は、こうした財界の求めに忠実に応えたものにほかなりません。 (佐久間亮)





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