2011年5月13日(金)「しんぶん赤旗」

主張

官房機密費

「つかみ金」が許されるときか


 平野博文氏、仙谷由人氏、そして枝野幸男氏と、民主党政権になって3人の内閣官房長官が続きました。政権交代したというのに、自公政権下とまったく変わっていないことがあります。官房長官が取り仕切る官房機密費の使途を、一切公開していないことです。

 菅直人内閣は、日本共産党の塩川鉄也衆院議員の質問主意書への回答で、昨年度の官房機密費の支出額が、自公政権当時と同水準の12億3000万円に上ることを明らかにしました。これほど多額の税金を「つかみ金」のように使う制度を、民主党はいつまで続ける気なのでしょうか。

「官邸の裏金」として

 官房機密費は、政策推進、調査情報対策などの名目で、官房長官の裁量で支出される経費です。支出先からの領収書は不要で、会計検査院の監査さえ受けることがありません。自民党政権からの歴代政権は「国益を損なう」という一点張りで、具体的な支出先の開示を完全に拒否してきました。

 しかし、日本共産党の調査、近年の官房長官経験者の証言などで、「官邸の裏金」というべきその実態が明らかになっています。

 志位和夫委員長が2002年に暴露した独自入手の官房機密費会計記録には、パーティー券購入、高級紳士服や商品券の贈呈など、官邸が直接乗り出し、与野党の議員らとの癒着を強めている実態が記されていました。自民党政権の官房長官を務めた野中広務氏は、著名な政治評論家への盆暮れの「お届け」が常態化していたとのべ、官邸の工作が言論界にも及んでいたことを明らかにしました。

 永田町では、選挙対策に機密費が使われてきたことも常識とされます。自民党が政権から滑り落ちた09年の総選挙直後に、当時の官房長官が2週間の間に、官邸の金庫から2億5000万円を持ち出すという異常事態も起きました。

 官邸がブラックボックスのように自由にできる巨額資金を持ち、悪法を通すための国会対策やマスメディア対策に使う。それが国民の税金で行われているところに事態の深刻さがあります。過去の自民党政治の時代からの政界のよどみの最たるものといえます。

 東日本大震災直後の3月17日にも、3000万円の機密費の支出が請求されています。枝野官房長官も心やましいものがあったのでしょう。4月14日の参院内閣委員会で、「どうやって被災者の皆さんを支援するかという観点でまさに効果的に使わせていただいている」と異例の答弁をしました。

 これも解せない話です。いま日本中が被災地のことを心配しています。本当に被災者のためになる税金の支出ならば、どうして国民の目から隠されなければならないのでしょうか。野党取り込みの金配りをしたのか、政府批判を抑える世論工作をしたのか。隠すから、国民の不信は増幅され、政府への信頼が失われていくのです。

公開の公約に反する

 民主党は野党のとき、機密費の使途の公開を国会で求め続けていました。政権についた後も、鳩山由紀夫首相(10年3月、当時)が国会答弁で、機密費の使途の全面公開を約束しました。それさえ棚上げするのは許されません。

 少なくとも、一定期間経過後に全面的に公開する。そこにしか国民の信頼を得る道はありません。





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