2011年5月11日(水)「しんぶん赤旗」

警戒区域 一時帰宅始まる

滞在2時間 川内村54世帯92人


写真

(写真)警戒区域内に一時帰宅してビニール袋1袋の荷物を持ち出す住民=10日、福島県川内村

 東京電力福島第1原発事故により一部が原発20キロ圏内の警戒区域とされている福島県川内村で10日、住民の一時帰宅が行われました。同区域に指定された9市町村で初めての実施で、54世帯92人が帰宅しました。

 午前9時すぎ、同村の村民体育センターに住民らが続々と集まり、防護服を着て、地域ごとにマイクロバスに乗り込みました。住民は放射能の線量計と無線機を持ち、配布された70センチメートル四方のポリ袋に入る分だけ持ち物を持ち帰ることが許されました。しかし、ペットは直接連れ帰ることができません。滞在時間は2時間。

 午後2時50分ごろ、一時帰宅を終えた住民が続々と警戒区域外へ戻ってきました。

 「牛にエサをあげることしかできなかった」。こう話すのは夫と2人で帰宅した畜産農家の女性(60)。21頭の繁殖牛の様子を見てきたといいます。「牛が生活の基本だからね。(国や東電は)しっかり補償してほしい」と訴えました。

 一時帰宅に際し、住民には「警戒区域が危険であることを十分認識し、自己の責任において立ち入ります」とする同意書の提出が求められました。文言は国のオフサイトセンター(緊急事態応急対策拠点施設)が示したもので、遠藤雄幸村長は「村の判断で取らなくていいなら、やりたくない」と強い不快感を示しました。

 避難先の千葉県茂原市から6時間以上かけて来た男性(66)は「国と東電が安全に責任を持つべきだ」と話しました。

 立ち入りによる住民の被ばく量は、最も高い人で10マイクロシーベルトで、この日の区域内の空間線量率は最高で毎時5・80マイクロシーベルトでした。 (秋山豊・細川豊史)


 川内村 福島県双葉郡の中西部に位置し、面積は約197平方キロ。人口は1107世帯の2891人(9日時点)。南北に阿武隈高地の山々が連なり、平均標高は約456メートル。葉タバコ、高原野菜の生産や畜産業が盛ん。詩人の草野心平(故人)は名誉村民。福島第1原発の南西にあり、北東部が警戒区域、それ以外の全域が緊急時避難準備区域とされました。原発事故の影響で役場機能は郡山市内に移転しました。

図




もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp