2011年5月10日(火)「しんぶん赤旗」

浜岡原発 全停止

震源域立地の責任問われる

原発ゼロへ世論と運動が重要


 中部電力が9日の臨時取締役会で菅直人首相からの浜岡原発運転停止要請を受け入れましたが、当然の決定です。福島第1原発事故で「安全神話」が崩壊し、全国の原発に向けられた国民の厳しい目が、首相要請から3日で運転停止受諾に追い込んだといえます。


 同日の会見で水野明久社長は、「総理の要請は重い」としつつ、あたかも被害者のように政府の支援、受け入れ条件を並べました。

 しかし、浜岡原発(1・2号機は運転停止、3号機は検査中で停止、4・5号機が運転中)は全国54基の原発のなかでも、とりわけ危険として廃止が問われてきました。静岡県御前崎市にある立地点は、巨大地震(マグニチュード8級)が想定されている東海地震の震源域の真上にあります。「世界一危険な原発」ともいわれ、建設計画当初から立地の無謀さが学者、専門家から指摘されてきました。日本共産党は1981年2月4日の衆院予算委員会で不破哲三書記局長(当時)が、「大規模地震のただなかのところへ何で原発をつくるのか」「世界でもまさに常識の域をはるかに超えたこと」と追及しました。

 もともとつくるべきではない所に原発を建設した責任が、中部電力に問われるべきです。

遅すぎる決断

 東日本大震災で起きた福島第1原発事故は、世界有数の地震国、津波国の日本に、技術に本質的な危険をはらむ原発を集中立地することがいかに危険なことか、国民の前に明らかにしました。

 事故をうけて中部電力は、津波対策など安全対策の手直しに着手しています。しかし、震源域の真上にある危険を解消するものではありません。東海地震の今後30年以内の発生確率(参考値)は87%で、いつ起こってもおかしくない大地震への、緊急・切迫した対応が求められています。

 首相の停止要請を短期間で受け入れたものの、建設当初から危険きわまりない原発といわれながら真剣に耳を傾けてこなかった経過から見るなら、遅すぎる決断といってもおかしくありません。

 日本共産党は、福島第1原発事故を受けた菅首相への提言(3月31日)で志位和夫委員長が浜岡原発停止を要求。5月2日の参院予算委員会で大門実紀史議員は「これを認めるかどうかは原発行政転換への試金石になる」として、柏崎刈羽原発(新潟県)とともに運転再開を許可しないよう質問。菅首相は「政府として本当に国民に安心してもらえるのか、しっかり見極めて判断しなければならない」と答えました。菅首相の中部電力への運転停止要請は、この答弁から4日後の動きとなりました。

再開する姿勢

 今回の運転全面停止は、浜岡原発の全面廃炉を決めたものではなく、9日の会見で中部電力は、津波対策ができれば運転を再開する姿勢を崩しませんでした。

 また政府は、浜岡以外の原発の見直しについては、今後の福島原発事故検証の経過を待って検討する考えで、仙谷由人官房副長官は「エネルギー戦略、政策は原発を堅持する」(8日)と発言しています。しかし震源域、活断層に近い原発をいくつもかかえ、依然として原発の切迫した危険に直面しています。

 国民の不安にこたえ、原発ゼロへの歩みにさらに踏み出すには、国民的な運動と世論の高まりが決定的に重要です。 (斉藤亜津紫)





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