2011年5月3日(火)「しんぶん赤旗」

B型肝炎訴訟 和解へ

原告団、基本合意書案を受諾


 全国B型肝炎訴訟原告団(谷口三枝子代表)は2日、東京都内で全国代表者会議を開き、4月19日に札幌地裁が示した追加和解案を含む和解所見全体(「基本合意書」案)を受諾することを決めました。

 和解協議は、原告が受諾したことで、すでに被告の国も受け入れを表明していることから「基本合意書」締結へと動き出します。

 記者会見した谷口三枝子代表(61)は「受け入れがたいが受け入れました。これ以上長引けば仲間が命を失います。納得のいく謝罪をしてもらいたい。恒久対策に力を入れていきたい」と語りました。

 追加案は、発症から20年以上過ぎると損害賠償の請求権が無くなる「除斥期間」の対象になる慢性肝炎患者について、治療中なら300万円、病状が納まっている患者には150万円支払うとなっていました。

 母親から二次感染した子どもには感染20年未満のキャリアーに対して600万円の賠償金を払います。ほかに、団体加算金として5億円を支払うことになっています。

 第1次和解案は、死亡者、肝がん、重度肝硬変2500万円、慢性肝炎1250万円、未発症のキャリアー50万円。1次案と追加案あわせて「基本合意書」となっています。

 原告団は再発防止などを求め声明を発表しました。

解説

「除斥期間」の見直しを

 原告団の一致した要求は「被害者全員の一律救済」でした。

 これに立ちはだかったのは国の「除斥期間」を口実にした被害者切り捨て策でした。

 B型肝炎は、感染から持続感染、発症、慢性肝炎、肝硬変、肝がんと一定の年月をかけて進行する病気です。感染していることさえ知らずに過ごすこともあり、国が予防接種で国民に多大な感染被害を出したことを長期に隠していたこともあって提訴するまでに20年以上を経過した被害者もいます。民法で損害賠償請求ができる期間(除斥期間)を20年と定めているために国はこれを理由に被害者の切り捨てに奔走しました。

 「より長く苦しんでいる被害者がより低い和解金しか受け取れないことは不条理であり不正義です」と原告団声明は、「除斥期間」を理由にした和解金の差別を批判しています。「除斥」については、すでに法制審議会などで廃止や変更について検討されています。

 原告団は、提訴から13人の原告が亡くなっていることや肝がん、肝硬変の被害者もいることから「早期全面解決」を国に迫ってきました。

 国内のB型肝炎感染者・患者は120万人。半数は予防接種による被害者とみられています。

 原告団は声明で「東日本大震災が起き、立法を含む政治による解決の先行きが極めて不透明と」なったことを指摘しています。国の「財政破綻」のキャンペーンもあって、損害賠償金請求の声がかき消される雰囲気があります。「二度の苦渋の決断」を迫られました。(菅野尚夫)





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