2011年4月29日(金)「しんぶん赤旗」

第3次嘉手納基地爆音差止訴訟

国内最大2万2058人提訴

那覇地裁支部


写真

(写真)爆音差し止め訴訟の原告団ら=28日、沖縄市

 米軍嘉手納基地(沖縄県)の爆音差止を求める裁判の3度目の提訴が28日、那覇地裁沖縄支部(沖縄市)で行われました。原告は、同基地周辺5市町村の住民2万2058人にのぼりました。国内裁判史上、最大規模です。

 第3次嘉手納基地爆音差止訴訟原告団(新川秀清団長)と同弁護団(池宮城紀夫団長)は同日午前、日本政府を相手取り、米軍嘉手納基地での飛行差し止めと損害賠償を求める訴状を提出しました。

 住民が求めたのは、(1)夜間・早朝(午後7時から午前7時まで)、一切の航空機の離発着禁止(2)夜間・早朝は40デシベル、昼間(午前7時から午後7時まで)は65デシベルを超える騒音の制限(3)過去と将来分の損害賠償金など。賠償額(提訴以前分)は446億1000万円余。アメリカ政府への提訴も別途検討中です。

 裁判所前は、貸し切りバスで駆けつけた原告や支援の県民で埋め尽くされました。新川原告団長は「戦争で“鉄の暴風”にさらされてから66年、いまだに爆音にさらされています。子どもらが防音教室に閉じ込められない地域を。静かな夜、平和な空をとりもどそう」と訴え。池宮城弁護団長も「“もう、これ以上我慢できない”と予想を超える2万2000人が立ちあがった、この怒りを日米両政府にぶつけ、新しい沖縄の歴史の一歩を」と呼びかけました。

 日本共産党からは地元沖縄市在住の嘉陽宗儀県議団長が連帯あいさつ。父親が1次訴訟で、自身も2、3次訴訟で原告となった男性(79)=うるま市=は「うるさくて電話もテレビも聞こえない。騒音だけでなく墜落の恐怖もある。裁判官もここに住めば分かる」と語りました。


解説

沖縄の怒り示す原告数

 2万2058人。嘉手納町民の3人に1人、基地周辺5市町村民の15人に1人、沖縄県民の63人に1人です。国内の裁判史上、空前の規模となった原告数は、沖縄県民の怒りの大きさを物語っています。

 第1次訴訟の提訴(1982年)から29年。第1次では、沖縄の米軍基地で初めて爆音が受忍限度を超える違法な侵害行為であることを認定する画期的な判断(94年、一審判決)を、第2次では、国に騒音改善の政治的責任があることを明確に指摘(09年、控訴審判決)しました。過去4度の判決のたびに損害賠償の対象者は広がりました。にもかかわらず、日米両政府は違法状態を放置し続けただけでなく、騒音をますます耐え難いものに拡大していきました。「戦後66年を経て、まだ戦争状態が続いている」「もう、これ以上耐えられない」。住民の怒りが沸点に達したのも当然です。

 裁判所は、爆音の差し止めを求める住民にたいして、国への請求は、第三者である米軍に日本の権限は及ばない(第三者行為論)として棄却、アメリカへの請求も、主権国家は他国の裁判に服さない(主権免除論)として却下(第2次・控訴審)するなど、司法による救済の道を自ら閉ざしています。最高裁(第2次)は、訴状をアメリカに送ることさえしませんでした。

 今次訴訟は、日本政府を相手取り、爆音の発生・住民の権利侵害に国が直接関与していること、国に爆音差し止めの直接的な義務があることを正面から問うものとなっています。「第三者行為論」の誤りをただすとともに、「『第三者行為論』で逃がさない」(池宮城弁護団長)構えです。

 これまで多くの原告が「この痛みを子や孫に残したくない」との切実な思いを胸に、歯を食いしばってきました。新川秀清原告団長は、今次原告団とこれまでとの違いについて、子や孫の世代の原告参加をあげました。「私たちの思いが次の世代に伝わった」。第1次から今次まで弁護団長を務めてきた池宮城弁護士も、沖縄弁護士会所属の若手弁護士が大勢加わってきたことを「沖縄の今後の大きな礎」と喜びます。「理屈じゃない。運動の中で、みんな育っていく」と新川団長。

 日米両政府は、沖縄の総意を踏みにじる基地と被害の押し付けが、怒りとたたかいを世代を超えて広げていることを知るべきです。 (青野 圭)





■関連キーワード

もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp