2011年4月28日(木)「しんぶん赤旗」

主張

原発事故被害

農業・漁業者への賠償を急げ


 搾りたての原乳やキャベツ、ホウレンソウなどを手に、乳牛も引き連れ、東京・千代田区の東京電力本店前に詰めかけた人々(26日)。福島第1原発の事故で重大な被害を受けている東北・関東地方の農家です。農民連や食健連が呼びかけた行動ですが、マスメディアでも注目を集めました。

 原発事故で避難を余儀なくされ、農産物などの出荷もできなくなった、農業者・漁業者の被害は甚大です。まさに死活問題です。東電は農業などの被害に、まだ賠償を支払っていません。東電と国の責任で、農・漁業者などへの賠償を急ぐべきです。

人災と認め責任を取れ

 東日本大震災で地震と大津波の被害を受け、建屋などが爆発して外部に放射性物質を飛び散らせた東電福島第1原発の事故は、地震と津波への備えを欠いた文字通りの“人災”です。東京電力はもちろん、原発建設を推進してきた歴代政府も、その責任は重大です。

 原発周辺の住民は、すでに1カ月以上避難生活をおくっています。避難区域の外でも放射性物質の拡散により、福島県や茨城県、千葉県などで原乳や葉物野菜、水産物などの出荷ができなくなりました。作付けの時期を迎える稲や葉タバコの生産も規制されます。

 農業者も漁業者も出荷できなければ収入の道が途絶えてしまいます。出荷しても風評被害もあって価格が暴落しています。出荷が規制され自殺に追い込まれた農家の痛ましい例や、避難区域の中で餌やりもできず餓死する多くの家畜など、事態はますます深刻になっています。

 原発事故で生じた被害を賠償するのは、国の法律でも定められた電力会社の責任です。東電はようやく避難生活をおくる人たちへの仮払いを認めましたが、農業者や漁業者、中小業者や観光業者などの被害に対しては1円も払っていません。国が責任をもち、東電に全面的に被害を賠償させることが急務です。

 そのさい、賠償範囲が決まっていないとか、東電の負担限度がはっきりしていないなどの理由で賠償を遅らせるのは本末転倒です。

 事故は“人災”であるとはっきり認め、出荷停止など直接の被害だけでなく、価格低落や休業への補償と風評被害を含め、広い範囲で賠償する姿勢が必要です。被害賠償の第一義的な責任が東電にあることは法律に明記されています。賠償の実行を後回しして、政府や東電が負担を少しでも軽くしようと画策するのは、絶対に許されることではありません。

 被災者の立場に立つなら、あらゆる被害の賠償に、政府と東電はあらゆる手だてをつくすべきです。東電に賠償を実行させるのは、政府の責任です。

被災者の手元に届ける

 原発事故で着の身着のまま避難を余儀なくされ、収入の道も断たれた被災者がいま緊急に求めているのは、暮らしを支え経営を立て直す賠償が一刻も早く手元に届くことです。本格的な賠償に時間がかかるとしても仮払いや立て替えなどあらゆる手段で賠償を始めてこそ血の通った対策になります。

 東日本大震災では、地震や津波の被災者への義援金の配分も、公的な支援金の支給も大幅に遅れています。政府は被災者の苦境打開に、まず全力をあげるべきです。





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