2011年4月25日(月)「しんぶん赤旗」
シリア 議員ら抗議辞任
反政府デモ 弾圧続く
【カイロ=伴安弘】22日のイスラム教金曜礼拝後の反政府デモで多数が殺害されたシリアでは、23日も南部ダラアや他の都市で、犠牲者の葬儀の参列に治安部隊が発砲するなどし、13人が死亡しました。血の弾圧に抗議して同日、ダラア選出の人民議会議員2人と、政府に任命された同地のイスラム法官が辞任。バース党による事実上の一党支配が続く同国でこうした辞任は異例で、体制内部でも亀裂が広がりつつあることをうかがわせています。
その議員の一人、ナセル・ハリリ氏は「アサド大統領は私にデモ隊には発砲しないと約束した」「治安部隊の弾圧から息子たち(デモ参加者)を守れず、議会にとどまる意味がない」と中東の衛星テレビ局アルジャジーラに語りました。
22日のデモ弾圧では死者が100人を上回ったとの報道もあり、国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長やオバマ米大統領をはじめとする国際的な批判を受けています。
アサド大統領は、反政府抗議デモが発生して以後、今月初めには内閣を改造し、21日には強権的支配を支えてきた非常事態法を解除したばかり。しかし政治的な自由と民主主義を求める人々は、弾圧によって犠牲者が拡大する中で、公然と政権打倒を求めており、その勢いが衰える気配はありません。
解説
転換点に差し掛かる
3月15日に首都ダマスカスで非常事態令撤廃を要求して始まったシリアの反政府デモは、その3日後に南部ダラアでデモ参加者4人が殺害されて以降、雪だるま式に全国に拡大。1カ月余が過ぎた現在、大きな転換点を迎えつつあります。
レバノンの政治評論家ジャミール・ムルエ氏は「体制による抑圧、不正・腐敗、無能、退化が組み合わさって」、国民を苦しみと怒りに駆り立てていると指摘。「民営化と不正・腐敗の特権が(怒りに)火を付けた」と分析しています。(レバノン紙デーリースター)
アサド大統領はデモ発生の当初から改革を口にし、今月21日にはデモの主要な要求であった非常事態令撤廃法案に署名。しかしそれは見せ掛けの「改革」にすぎないことを、反政府デモ隊の側は読み取っていました。翌22日の血の弾圧は、抗議デモのいっそうの拡大とそれを許さない政権側の強硬姿勢という二つの側面を示しました。
シリアには、アサド一族が属するイスラム教アラウィ派(シーア派の一派)が少数派でありながら政治を支配し、一方で国民の多数派はスンニ派という矛盾があります。アサド政権は、憲法で政権党と規定されたバース党とともに強権的な治安機関を通じて支配を続けてきました。
シリア軍ではアラウィ派忠誠者が中枢を握っているといわれますが、スンニ派が多数の兵士の中には、反政府デモ隊への発砲を拒否する者もいます。デーリースター紙は「軍が分裂する可能性は大きい」とし、「政権を倒すのは容易ではない」が、政権が分裂する可能性もあると指摘しています。(カイロ=伴安弘)
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