2011年4月24日(日)「しんぶん赤旗」

災害救助法 最大限活用を

知られていない「国が食費負担」

服や食器も支給対象


 1日おにぎり3個とパン1個の食事、くみ取りの遅れで流せないトイレ。東日本大震災と原発事故の避難生活は長期化し、衛生上、健康上、深刻な事態が広がっています。被災市町村が財政の不安から十分な手だてを講じられない実態もみえてきています。被災者救助への国の責任を定めた災害救助法を最大限活用することが求められます。


 災害救助法は、被災者救助の費用を国と都道府県で負担すると定めており、市町村の財政負担は生じません。政府は都道府県負担分も「極小化する」(厚労省災害救助・救援対策室)方針です。

炊き出し費用も

 市町村による炊き出しや食品の支給も災害救助法の対象です。避難所の被災者に限らず、住宅に被害を受けて炊事のできない被災者も対象になります。

 国が定める食費の一般基準は1人1日1010円。災害救助法適用のあらゆる救助について、一般基準で対応できない場合は、それを超える特別基準を県が設定できます。阪神・淡路大震災時には、日本共産党が被災者とともに当時の一般基準850円に基づく劣悪な食事内容を示して世論と運動を起こし、兵庫県に1200円の特別基準を設定させました。

 ところが東日本大震災のある被災市の担当者は、避難所の食事のほとんどは費用のかからない救援物資だと語りました。「外注を考えた場合、財政サイドと話し合う必要がある」といい、財政負担への懸念から被災者に十分な食事が届いていませんでした。市から確実に配られたのは被災1カ月後も1日おにぎり3個とパン1個でした。救援物資の範囲内で野菜ジュースやカップめんなどが出ました。

市町村に周知を

 災害救助法の運用について、被災市町村への周知が不十分な現状もあるとみられます。

 被災地を回った医師は、たんぱく質や野菜が避難所の食事に不足しがちだと指摘します。

 日本共産党の田村智子参院議員は19日の厚生労働委員会でこうした実態を示し、災害救助法の周知徹底と事態の改善を求めました。

 厚労省の大塚耕平副大臣は、被災者に炊き出しや食品の支給を行った自治体に財政負担は生じないことを認め、県の要請でボランティアが行った炊き出しも国庫負担の対象になると答弁しました。


災害救助法の対象となる救助

 被災者への食品の支給のほか、次のようなものに災害救助法が適用され、ほとんど全額が国庫負担となります。被災地外の都道府県が被災者を受け入れて支援した場合も、災害救助法が適用されます。

避難所のトイレ設置

 バキュームカーによるくみ取りが遅れ、排尿しても水を流さず、使用後のトイレットペーパーをごみ袋に入れている避難所もあります。感染症が爆発的に広がる恐れが指摘されています。災害救助法に基づく避難所のし尿の収集、運搬、処理の費用は、災害廃棄物処理事業の特例措置として「事実上地方の負担はゼロ」(樋高剛環境大臣政務官)になります。

生活必需品の支給

 生活必需品をそろえられずに仮設住宅に入居できない被災者がいます。被服、寝具、炊事用具、食器、光熱水費などの生活必需品の支給は対象です。

仮設住宅の設置

 新たに建てるものだけでなく、公営住宅、UR賃貸住宅、民間アパートの空き部屋の借り上げなども対象です。

福祉避難所の設置

 体育館などの避難所での生活が難しい高齢者、障害者、妊婦、新生児などの要援護者のために、福祉避難所を設置することも対象です。介助員の給与、介護ベッド、ポータブルトイレ、おむつの費用など、必要な支援の実費が対象となります。避難所の一部に設置することも可能です。

医療・助産

 避難所に救護班を置いた場合などの医師や助産師の給与、薬剤費、治療材料費、衛生材料費など。

学用品の支給

 教科書、教材、文房具、通学用品。

住宅の応急修理

 修理用原材料費、労務費、材料輸送費など。

埋葬

 棺、骨つぼなど。

障害物の除去

 必要な機械・器具の借り上げ費、輸送費、職員の賃金など。





もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp