2011年4月22日(金)「しんぶん赤旗」

主張

成年被後見人の選挙権

社会への「参加」の機会奪うな


 障害のある人の権利と生活を守るはずの制度を利用したことで、選挙権を奪われている人たちがいます。成年被後見人です。

 認知症や知的障害、精神障害のある人が、財産の管理や契約で不利益を被ることがないよう、後見人をたてることができるのが成年後見制度です。公職選挙法の不適切な規定が改められていないために、後見を受けると参政権が奪われます。憲法違反だと国を訴える訴訟も起きています。早急に制度を見直すべきです。

制度の理念に背く

 成年後見制度が始まったのは2000年4月です。同様の制度としてそれまであった「禁治産者」は、対象者を社会から排除する思想に立って人権を考慮せず、社会的にも負の印象が強いものでした。それにかわる成年後見制度は、自己にかかわる事柄はできるだけ自分で決める自己決定権の尊重、障害者や高齢者が社会の一員として普通に活動できる社会を目指すという理念に立ちながら、弱い立場の人を守るための制度です。

 公職選挙法第11条は、従来、禁治産者を「選挙権及び被選挙権を有しない者」としていました。制度が変わり、理念も根本的に変わったのに、公選法は禁治産者と成年被後見人を同列に扱い、引き続き参政権を奪い続けています。権利の擁護を目指す制度が、逆に安易な権利の制限を生んでいます。

 総務省は「選挙時に個別に投票できる能力を審査するのは困難なので、従前の禁治産者同様、選挙権は認めていない」といいます。投票できる能力とは何なのか。

 国を訴えた被後見人の48歳の女性は、成人後、地方選も含めほぼ毎回選挙に行き、自筆で投票し、選挙公報も熱心に読んでいました。07年に父親を後見人に選任してから、投票所入場券が送られてこなくなりました。成年後見制度を利用したとたんに「能力」が失われたとでもいうのでしょうか。

 「能力」を選挙権の条件にする発想がすでに間違っているのです。財産を管理する能力と選挙で判断する能力はまったく別物です。被後見人の多くは、立派に選挙で自らの意思を表明する力を持っているのに、一律に、全面的に、それを否定されています。

 選挙は、議会制民主主義の根幹を成すものです。民主国家では、選挙権は一定の年齢に達した国民すべてに、平等に与えられなければなりません。正当な事由なしに「国民の選挙権を制限することは憲法に違反する」という最高裁の厳しい判決もあります。

 総務省がやらなければならないことは、「能力を審査」することなどではありません。一人一人が選挙をできるかどうかを「確認」し、投票するために必要な投票所のバリアフリー化、投票方法の工夫、情報の提供など、選挙権を保障する条件づくりをすることです。

法相も「重要な指摘」と

 日本共産党は制度の開始のときから被後見人の選挙権の回復を求めてきました。井上哲士議員の参院法務委員会での質問には、江田五月法相が「重要な指摘だと受け止める」と答えています。

 障害のある人への支援が十分でない現状のなか、投票は障害者自身がアピールする重要な機会です。一人一人の社会参加を何より大切にするために、政治は、公選法の改正に責任を果たすべきです。





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